クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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独断と偏見の識別講座Ⅱ

波多野邦彦

総目次

第86回 Swallows <イワツバメ、ニシイワツバメ>

渡りの時期、他のツバメ類に混じって観察される場合がある。全長は15cmと日本のイワツバメと変わりないが、翼が長く、腰だけでなく上尾筒まで純白で長く見え、僅かに大きく感じる。体下面は汚白色のイワツバメと違って、ニシイワツバメは純白。上面の頭から背にかけて青味のある光沢。尾は切れ込みが深く明瞭な燕尾。日本海側の離島で春秋の渡りの時期にイワツバメやコシアカツバメの群れに混じって飛ぶ本種を何度か観察したことがある。

 福岡県新宮市 Field Noteから

イワツバメ成鳥

下面は汚白色。短い翼、尾の浅い切れ込み。

イワツバメ幼鳥

下尾筒に明瞭なウロコ模様が見える。

全国に夏鳥として飛来するが、九州ではほぼ一年中見られる。建物の軒下や橋梁の下に集団で営巣し、その周辺では群飛する姿が見られる。「ジュリジュリジュリ」「ジュリジュクジュクジュク」など濁った特徴的な声を出し、上空を飛ぶ声で気づくことも多い。上面は僅かに青味のある黒色で腰の部分が細かな褐色の羽軸が見える白色。上尾筒は黒色。下面は汚白色。ツバメなどと比較すると翼は短めで羽ばたきと滑翔を交えて飛ぶ。尾は短く浅い切れ込み。
筑豊支部管内では過去に彦山駅舎に集団営巣していたが姿が見られなくなり、昨年駅舎の建物も無くなってしまい非常に寂しくなった。

宗像市鐘崎 2022年3月10日

集団営巣地での様子。*
ここでは漁港建物の一階天井部分に30番ほどが巣を架けている。親鳥は頻繁に餌を獲りに飛び立つが、群れが一斉に出て行った後、しばらくすると一斉に戻ってくることを繰り返す。天候や時間にもよるのだろうか、鳴き声も聞こえず全く飛ばない時もあり、居なくなったのだろうかと心配になることもある。 短めの翼で羽ばたきと滑翔を交えた飛び方をし、空中でしばしば体をブルブルッと震わせるような行動をすることがある。
撮影は3月上旬だったが、既にヒナが大きく育っており(真ん中はヒナ)、中には飛び回っているものも観察された。稀にヒメアマツバメが観察されるが、営巣は未だ確認できていない。

宗像市鐘崎 2022年3月7日

■終わりに

  1. イワツバメはユーラシア大陸からアフリカ大陸北部にかけて広大な地域に分布します。数亜種に分けられ、国内では北海道から九州にかけて夏鳥として飛来します。九州では越冬しておりほぼ一年中観察され、たいへん身近な野鳥の一種です。橋梁や建物の天井部分に集団で営巣し、その周辺では大きな群れで飛び回っているところが観察されます。
  2. 本来は山地の岩場や洞窟などに営巣していたものが、次第に街中に進出して来て人工物を利用するようになったと考えられています。
  3. 集団営巣地での画像からもわかるように跗蹠や趾が白い毛で覆われているのもこの種類の特徴です。通常は飛んでいるところを見かけることが多いですが、集団営巣地などでじっくり観察してみるのも面白いかもしれませんね。

■参考文献

  • BIRDS OF EAST ASIA: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON AND OXFORD
  • Collins BIRD GUIDE The Most Complete Field Guide To The Birds of Britain and Europe: Harper Collins Publishers Ltd
  • A Guide to the Birds of Southeast Asia CRAIG ROBSON: PRINCETON UNIVERSITY PRESS PRINCETON,New Jersey
  • 決定版日本の野鳥650 真木広造 大西敏一 五百澤日丸 (株)平凡社
  • フィールド図鑑 日本の野鳥 水谷高英 叶内拓哉 文一総合出版
  • BIRDER 2012 05 ツバメ前線北上中 文一総合出版
  • BIRDER 2018 05 特集ツバメ大百科 文一総合出版

注)本識別講座において過去の記録を検証して意見を述べる場合がありますが、あくまで個人的見解であり、当該記録を否定するものではありません。誤解のないようにお願いいたします。

(2022-06-21掲載)

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