クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2024-12-02

鳥さん、こんにちは

村田希巳子

総目次

イギリスの鳥たち (その1)

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旅の仲間 03-12

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3月10日から27日までの18日間、専門の研究調査のためイギリスに行くことになった。イギリスに行くのは、今回が初めてである。イギリスの旅費は冬が一番安いこともあり、しかも(こちらが本命かも)鳥がたくさん見られることもあり、迷わずこの時期に決めた。

3月10日の北九州の気温は17度前後。春うららかな陽気に包まれて、軽装で出発した。福岡から上海まで1時間半。上海からロンドンのヒースルー空港まで13時間。気が遠くなるような長時間の飛行に耐えて、やっと同日の夕方5時に到着。長年企画部長をやってきた私だ。旅程は用意周到に企画したので、完璧なはずだった! そう、そのはずだったのに・・・この大変な旅行に付き合ってくれたのは、おっとりしているがそそっかしいところのある友人の厚子さん。いよいよ弥次喜多道中の始まりだ。

私たちは、時差ボケを甘く見ていた。二人とも自分の体内時計を信じていたのだ。初日は、予約していたB&B(家族経営の朝食付き格安ホテル)で早々と就寝。翌朝まず私が目覚めて、ベッドから起き上がり、さっさと身支度をし、出かける準備をした。彼女も黙々と準備をした。そして、ふと時計を見ると、まだ夜中の1時半だ。二人とも笑い転げた後、寝巻に着替えて再びベッドへ。次に彼女が目をさまし、二人とも黙々と身支度をした。また時計を見ると、夜中の3時半。ここで二人は学んだ。着替える前に、時計をチェックしなければならないと。こうして、時差ボケのまっただなかで、二日目が始まったのだ。

3月11日。気温は、零度から4度。日本とは大きく違って、厳寒のイギリスツアーの始まりだ。まずは、ロンドン市内の観光である(それぞれの都市には、地下鉄、バス、それぞれの乗り方があって、それをマスターするには、ありとあらゆる失敗を体験した。おかげで今では、行きたいところに、地図を片手にすいすい行ける自信がある。いつでも皆さんをイギリス観光にお連れできるくらいだ)。

手始めに、バッキンガム宮殿の衛兵交代式を見に行く。みぞれが容赦なく吹き付ける。体の芯まで冷えた。こんなに寒いのに、多くの見物客が世界中から集まっていた。みんな本当に物好きである。灰色のコートを着た歩兵隊が、吹奏楽を奏でながら整然と登場。イギリス人男性は、美しくて絵になる。

交代式が終わって、地下鉄駅に向かって歩いていると、偶然にも、バッキンガム宮殿の隣に位置するセント・ジェイムス・パークの湖に出た(ストリートビューから公園内に入れる)。ここは、思いがけない野鳥の宝庫だった。もしかしたら、イギリス中で一番鳥が集まっている場所ではないだろうか。冬にイギリスを訪れるバードウォッチャーには必見の場所だ。たくさんのカモメやカモが羽を休めている。人間が近づいても全く飛び立とうとしない。きっとイギリス人は餌をまく人が多く、慣れているのだ。鳥は逃げるどころか、むしろ近づいてくる。これでは、名カメラマンの下川君でなくても、私の小さなデジカメで写せる。しかもけっこう鮮明にだ。こんな体験は初めてだった。

この時片っ端から撮った写真が、後で名前を調べるのに、とても役に立った。カモメ類は、ユリカモメとセグロカモメだ。この2種類のカモメは、海辺はもちろん、内陸部にいたるまでイギリス全土で見られた。カモ類は、マガモ、カルガモ。これもイギリス全土で見られた。

この湖には、なんとキンクロハジロ、ツクシガモとホオジロガモもいた。こんなところでお会いできるなんて。

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アカハシハジロ 03-11

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そして今回初めて見るカモをさっそく写真に撮った。頭と顔はオレンジっぽい茶色で、わき腹は白いが、背中も茶色。首は黒。嘴は鮮やかな赤が目立つカモで、“Philip's Guide to Birds of Britain and Europe”『フィリップ氏によるイギリス・ヨーロッパの鳥案内』という本によると、Red-crested Pochardというカモだった。家に帰ってこの鳥を調べ直してみると、なんと日本にはまれにしか渡来しない迷鳥のアカハシハジロである。ラッキー。イギリス旅行中、この鳥には、後でも何度かお目にかかることになる。

Highslide JSカオジロガン 03-11
Highslide JSカナダガン 03-11
驚いたのは、このセント・ジェイムス・パークの小さな湖で、イギリス中で見られるガンのかなりの種類にお目にかかれたことだ。

まず、頭と喉は黒いが頬と喉が白いカナダガン(Canadian Goose)。これは、以前カナダで出会った鳥だが、イギリス全土で会うことになる。次に、カナダガンに似ているが、白い部分が、頬と喉ではなく、顔全体が白いガンがいた。これは、和名はそのままでカオジロガン、英名は(Barnacle Goose)、意味はフジツボという意味だ。あの岩に付着する甲殻類のフジツボ。言い伝えでは、フジツボからガン(雁)が生まれるとある。そこから名づけられたのだろう。

▼写真は、クリックで拡大(ドラッグで移動可)、再度クリックで縮小します。
Highslide JSハクガン 03-11
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エジプトガン 03-11
Highslide JSインドガン 03-11

次に、日本ではこの旅鳥の分類が変わり、新たに日本の鳥となったインドガン。白い後頭部に2本の筋が入っているので、英名は線(bar)がある(Bar-headed Goose)。次に、腰がオレンジで、翼鏡が緑で目に茶色のクマができているような顔のエジプトガン(Egyptian Goose)。これは、アフリカから渡ってきて居ついた鳥だが、ガン類というより、ツクシガモに近い種だそうだ。また、全身真っ白だが、初列風切だけが黒いハクガン(Snow Goose)がいて、その白さが異様に美しい。以上ここだけで5種類ものガンが見られたのは、驚きであった。

(注:写真説明右の数字は撮影月日・現地時間、2013年)

(つづく)

(「野鳥だより・筑豊」2013年6月号通巻424号より転載)

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