クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2017-09-20

鳥さん、こんにちは

村田希巳子

総目次

イギリスの鳥たち(その4)

前号まで、ガンやカラスなど、大きな鳥の話ばかりしてきた。今回は、小鳥に焦点を当ててみたい。

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趣ある東屋の前で 03-15

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私たちは、シェフィールドという町にある友人(写真)の家で3泊した。彼女の家は、中世の古い家が残っている、郊外の自然豊かな場所にあった。

厚子さんと私は、必ず朝6時30分から、朝食前に1時間散歩し、野鳥や植物を探すことにしていた。ロンドンの繁華街でも早朝は静かで、鳥の鳴き声があちこちから聞こえてくる。昼間は、鳥なんか1羽もいそうもないのに、朝は、どこからともなく鳥が表れるので、まったく油断禁物だ。

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思い出のために 03-16

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シェフィールドでも、早朝は、鳥の大合唱が聞こえてきた。ここで初めて、日本でお馴染みのスズメ(Tree sparrow)に出会った。この種のスズメには、18日間のイギリス旅行のうち、ここシェフィールドの同じ場所でしか出会えていない。別の場所で2回出会ったスズメは、イエスズメ(House sparrow)で、少しニュウナイスズメに似ていて、頬の黒色部分がないかわりに喉が黒い。イギリスでは、イエスズメのほうが人間の生活に馴染んでいて、私たちにとっての普通のスズメは、むしろ森の中で営巣しているそうだ。所変われば、生息環境も変わるということらしい。いつもチュンチュン鳴いているスズメに出会ったとき、なぜかほっとして親しみを覚えた。

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カササギ 03-11

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シェフィールドにいる私の友人も鳥に詳しいが、朝の散歩で出会う人たちも鳥に詳しい人が多かった。「あそこに鳥がいるから行きなさい」と親切に教えてくれる。

早朝は、3か所でカササギ(Magpie)がカシャ、カシャと鳴いていた。スズメとカササギに会えて上機嫌になった私は、散歩中の男性に、「カササギってきれいですね」と言うと、「僕は、カササギが嫌いだね」との意外な答えが返ってきた。理由を聞くと、カササギはあちこちに営巣するので、他の小鳥を追い払うのだそうだ。「彼らのせいで、小鳥の数が少なくなったよ」。

日本では、天然記念物に指定され、佐賀県の県鳥にもなっているのに、イギリスではなんと「不幸のしるし、死の知らせ、悪魔」の鳥と嫌われていたのだった。キリストが、亡くなった時も、他の鳥は悲しんでいるのに、カササギだけは残酷にも喜んでいた、と忌み嫌われている。なんとこの鳥は、2000年以上前から存在し、人類の歴史を眺めてきたのだ。それにしても、カラスを愛し、カササギを嫌うイギリス人の趣向とはいかに。いずれにせよ、イギリスではカササギの話をしないほうが得策のようだ。

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川辺の散策 03-15

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朝の散歩で必ず出会うのが、カラ類だ。一番多いのがシジュウカラ(Great tit)で、おなかが黄色いし、イタリアでもしょっちゅう見られた鳥だ。私は、シジュウカラのヨーロッパ版と思っている。この鳥は、great(大きい)と名前はついているが、普通のシジュウカラよりも小さく、おなかが黄色いのが特徴だ。中国からヨーロッパまで生息しているが、日本で見るシジュウカラ (Japanese great tit) の方が、日本とアジアの一部にしか生息していない。むしろ世界の主流は、この Great tit のシジュウカラなのだ。

この Great tit と同じくらいひんぱんに出会ったのが、アオガラ(Blue tit)で、シジュウカラの頭と尾の黒い部分が、青いだけだ。おなかはやはり黄色だが、全体的に青っぽく見える。いつもこの2種類は、交互に現われていた。それに交じって、時々ではあるが、もう1種、黒っぽいカラ類もよく見られた。それは、図鑑で確かめると Coal tit だった。普通、町中で見られるので、イギリス特有の鳥かと思いきや、なんとこれは、普通のヒガラだったのである。日本では、山林地帯でよく見かけるが、イギリスでは、町で普通に出会う。青、黄、黒色の3種がそろって鳴くと、朝焼けの中で美しい合唱が丘にこだまする。

すると、それに加わって鳴き始めた小鳥がいた。見ると、普通のエナガ(Long-tailed Tit)ではないか。しかも英名では、titがつくので、これもカラ類なのかな?と思いイギリスの図鑑を調べてみると、「カラ類にとても近いが、エナガ科である」と弁明した後に、しっかりエナガ科に入っていた。日本の図鑑はもちろん、シジュウカラ科とエナガ科はしっかり分けている。この件に関しては、日本の名づけ方のほうが、合理的だと思われる。

小鳥が群がる中で、さらに小さい鳥を見つけた。よく見ると、なんと普通のキクイタダキ(Goldcrest)ではないか。図鑑にも載っているので、間違いない。頭の黄色い部分が目立つ。日本では、それを菊の花を頭に戴いたと解釈をし、キクイタダキと名付けた。一方、英名では、「金色のとさか」と考え、そこから鳥を名付けている。

それぞれの見方の違いが分かると趣深い。キクイタダキの愛らしい目にはどれほど心がなごまされたことだろう。菊という言葉に、日本の郷愁を覚えた。

(つづく)

(注:写真説明右の数字は撮影月日・現地時間、2013年)

(「野鳥だより・筑豊」2013年9月号通巻427号より転載)

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(※シジュウカラに関する記述に間違いが見つかり、著者により訂正されました。波多野様のご教示に感謝します。サイト管理者:有働 2013-11-08)