クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2017-09-20

鳥さん、こんにちは

村田希巳子

総目次

イギリスの鳥たち(最終回)

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アイオーナ島03-21

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3月厳寒イギリスに行ったことが、もう夢のようである。日本に帰って、猛暑の夏を過ごし、今は台風の季節、秋を迎えている。長い旅行記になってしまったが、これは3月の10日から26日までのたった2週間の旅行記である。

あの時は、野鳥の本や専門書をたくさん買い込んだので、重いキャリーバッグを抱えて、階段を上り下りした。その時、たくさんのイギリス紳士、淑女が手伝ってくれた。なかには、「君、これは本当に重いんだけど、この中に君の夫を入れていない?」とイギリス人らしいユーモアを飛ばしながら、手伝ってくれた人もいた。

メルロースという僻地の資料館に行くのに、レンタカーを借りて運転した日は、震え上がった。「日本と同じ左側通行だから、問題ない」とたかをくくっていたら、方向指示器とワイパーが日本の車とは逆についていて、右に行こうとしてもワイパーが動くだけなのだ。しかも方向指示器の止め方がいまイチ分からなくて、右と左を交互に出しながら進むという最悪の事態になった。誰もが私の車を見て、「この人は狂っている」と思ったことだろう。私だって、「私は日本人で〜す。お願い。許して〜。」の旗を車に掲げて運転したかった。おまけにナビは付いていなくて、地図を見ながら進む不安さったらない。

途方に暮れながらも何とか目的地に着くと、カササギ、クロウタドリ、ニシコクマルガラス、ミヤマガラスに迎えられて、少しは気が落ち着いた。ここは昔、スコットランドとイングランドが激しく戦ったボーダー地方で、修道院も廃墟になっていたが、スコットランドの独立願望の気概を感じる場所だった。

帰途に就くと、途中で大雪に見舞われて、標識も見えなくなってしまった。恐怖の中でなんとかエジンバラにたどり着いたとき、レンタカー屋のおじさんが、「よくがんばったネ」と変てこなジェスチャーで褒めてくれた。スコットランドの自慢ポーズは、両手で自分の両肩をたたくのだそうだ。最初「肩に何かついているのか?」と思った。言葉だけでなく、ジェスチャーの意味も全く違うことが面白いと思った。

グラスゴーから特急電車で3時間北に上って行くと、オーバンという小さな港町があり、そこから、フェリーで中世のスコットランドの宗教の中心地、アイオーナ島に渡った。

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ニシセグロカモメ03-20

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ミヤコドリ03-22

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その時、大きなミヤコドリ(Eurasian Oystercatcher)に3羽出会った。これは、日本で出会うミヤコドリとまったく同じで、嘴が赤くて長く、頭部と背中が黒で、体下面と胸は白い。45センチもあるのでとても目立っていた。イギリス、北欧、ロシア、中国、日本などで見られるので、名前にユーラシアと付いている。この鳥は、アメリカでは見られない。私がアメリカで見たミヤコドリは、頭は黒いが、背中が黒ではなく焦げ茶色だ。名前もAmerican Oystercatcherという。オイスターは牡蠣なので、牡蠣だけを食べるのかと思いきや、2枚貝なら何でも上手に開いて食べるらしい。

オーバンでは、オオセグロカモメとニシセグロカモメをよく見た。

カモ類といえば、イギリス中でほとんどマガモしか見なかったが、北のほうではツクシガモにも会えた。北のこのあたりでは、年中ツクシガモに会えるらしい。5月になると、アイオーナ島の隣の島に、ツノメドリが来るという。残念!会いたかったな。

最後に猛禽類について触れないといけないだろう。イギリスは狩猟が盛んで、トビが一時絶滅してしまったことで有名だ。けれども、1980年代に若鳥を放ち、今は、繁殖が成功しつつあるそうだ。イギリス人のバーダーが日本に来て、トビを見て感激していたが、もうすぐ、イギリスでも見られるようになるらしい。もっとも、イギリスのトビは、Red Kiteで、日本のトビは、Black Kiteと種類が違うのだが。残念ながら私は、このRed Kiteに一度も出会えなかった。私が唯一出会えた猛禽類はチョウゲンボウ3羽だが、これもオーバンから帰る列車の中から、ホバリングしているのを見ただけだった。

以上で、私のイギリスの報告は終わりである。

最初に記した通り、3月なのに、厳寒のイギリスは、図書館や資料館が休館で、仕事上の成果は半分くらいしか上がらなかったが、鳥に関しては、大きな収穫を得た。厚子さんと朝早く起き、必ず1時間散歩に出かけたので、それぞれの町の様子を知るだけでなく、たくさんの鳥たちにも出会えた。2週間あちこちイギリス中を旅し、寒さに震え、失敗ばかりしてへこんだ時もあったが、いろんな鳥たちに勇気づけられた。

私が、寒さの中でじ〜っと鳥を観察していても、文句ひとつ言わずについてきてくれた厚子さんに心から感謝したい。

イギリスに、もう一度行くチャンスがあるなら、5月以降の温かい時、しかも夏鳥が見られる時にぜひ行きたいものである。

(「野鳥だより・筑豊」2013年11月号通巻429号より転載)

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