日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリレンジャー
中村 聡
総目次
04: 草刈りに思う
今回は、自宅アパート横にある公園のお話し・・・ミズナラやシラカンバが芽ぶいて葉を広げ、緑の色を濃くしていくにつれ、林の下にもいろいろな草花が次々と見られるようになった。セイヨウタンポポで一面が黄色く染まった時もあったし、またある時は背丈が5センチほどのフデリンドウが空色の花を上向きにひっそりと咲かせていた。
びっくりしたのは、つぼみをつけたマイヅルソウの群落を見つけたこと。ハート型に広げた葉の間から、15個ほどの白い小花のついた長い柄を出した様子が、鶴の舞う姿に似ているということで名がついた草花だ。僕の生まれ育った九州では、少し高い山の針葉樹林などでしか見られない。それがこんな身近な公園にある。驚きだった。
高い緯度にある北海道は冷涼で厳しい気候のため、本州などで高い山々に咲く花、いわゆる高山植物が低地でも見られるのだ。すぐ近くでは、植えたものかも知れないがスズランも咲きつつあった。
いつ見ごろになるか楽しみにしていたところ、なんとある日「グィーン、キーンキーン」という草刈機の轟音とともに、みるみる刈り取られてしまった。ちょうど夏草が生い茂る前で、公園の安全確保と美化のため作業が入ったようだ。
もう少しだったのになぁ。後で見にいってみると、鑑賞できるスズランだけが刈り残されていた。そうか。「こんなところに」と僕が思ったマイヅルソウは、こちらでは「どこにでもある」雑草に過ぎなかったのだ。
何でこんな花を刈っちゃうんだろうと、最初は思ったが、ところ変われば何とやら。自然に対する人の関わり方もその土地、その土地で違うものだと知った出来事だった。
(原文は「苫小牧民報」2007年7月9日掲載)
(2014-05-14掲載)
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