クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
total 
modify:2025-02-14

*風のたより

日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリくまたか外部サイトレンジャー
中村 聡

総目次

07: 秋の川で

Highslide JS

(写真をクリックで拡大・縮小)

群れで泳ぐシロザケ

北海道に赴任したら見てみたいものがいくつかあった。そのひとつが鮭の遡上だ。以前に道内を旅したときに出合ったことはあるが、いつも橋の上から眺めるだけなので、もう少し間近に感じたい、ずっとそう願っていた。

そんな折、白老(しらおい)がいいですよと職場の同僚から聞き、9月下旬にさっそく行ってみた。とある川を海から遡ること数キロ。そこは幅が10メートルほどで、流れに沿って小道がついていた。数匹が浅瀬でバシャバシャと水しぶきを上げるのが見える。すごい、すごい。

Highslide JS

(写真をクリックで拡大・縮小)

小さな滝を上るシロザケ。がんばれっ!

川を上流に向かって歩く。足元からすぐの淵ではかなりの数の鮭が泳いでいた。このあたりで見られるのはシロザケとのこと。うろこが銀色に光る美しいものもいるが、岩でこすれたのか、多くはどこかが傷つき痛々しい。

圧巻だったのは本流に注ぐ小さな川での光景。ひしめき合うように鮭が泳ぎ、そのうち何匹かが1メートルほどの落差を上ろうとしていた。小滝の上に産卵できるような場所は、ない。それでも果敢に挑戦している。その姿に僕は、何というかすごく感動して思わずガンバレと叫んでいた。本当に泣きそうだった。

Highslide JS

(写真をクリックで拡大・縮小)

遡上後に死んだシロザケ。ホッチャレと言う

途中で川の中に入ってみた。淀みの近くに立ってじっとしていると、僕を枯れ木だと思うのか鮭は近くを自由に泳ぎ、オス同士の争いや卵を産む場所をつくるメスなど、いろいろな行動を見せてくれた。またまた、感動。

岸辺には死んだ鮭が数多く横たわり、オオセグロカモメがついばんでいた。独特のにおいが漂う。次いでキセキレイもやって来た。こちらは腐肉に集まるハエを狙っている。さらにこの鳥を追いかけるハイタカも目にした。生命を全うする鮭に驚き、さまざまな生きものたちのつながりを感じた秋の1日だった。

(原文は「苫小牧民報」2007年10月15日掲載、写真はいずれも2007年9月25日撮影)

(2014-08-16)

左矢印前へ  上矢印目次  次へ右矢印

ご意見・ご質問はこちらへ