日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリレンジャー
中村 聡
総目次
11: 赤い鳥 ことり
11月下旬に到来した寒波で、ウトナイ湖の大半は結氷してしまった。昨季に比べるとずいぶんと早い。わずかに残る水面にはオオハクチョウやカモたちがひしめいている。葉が落ちて明るくなった林に目を移すと、同じく冬鳥であるツグミなどの姿も見られる。
そんな中、同僚から嬉しいニュースをもらった。ベニヒワが来ているという。スズメよりも小さい「紅色の鶸(ひわ)」。赤いベレー帽をかぶったような頭が特徴で、オスはさらに胸までがピンク色をしている。わぉ。早く見たい。どこにいるの?まっ先に尋ねた。
なぜこんなにも心惹かれるのか。それはその風貌にある。とにかく小さくて可愛い。白っぽいからだに赤い部分がわずかなのも控えめでいい。北極圏で子育てをし、越冬のため渡って来るが、羽数は年によって大きく変わり、全く見られないシーズンもある。しかも北海道以外ではなかなか出合えない。こういったことが僕のトキメキ感を高めている。
どうやら今冬は当たり年のようで、じつは札幌近郊でもかなりの数の群れがいるとのウワサを聞いていた。でも早くしないと移動してしまいそう。食べものを求めて南下する可能性は大いにある。あせったがついに先日、その願いは成就した。湖そばの観察路からハンノキの種子を食べる3羽を見ることができたのだ。同じくらいの大きさでレモン色をしたマヒワの群れに混じっていた。このまま年を越せば、「紅」鶸と「白」鳥が同時に見られるかも。新年から縁起がよいに違いない。
(原文は苫小牧民報「2007年12月10日」掲載)
ここ数日は真冬日(つまり、1日中マイナスの気温)が続いています。湖は早くも12月14日に約8割が結氷し、それまで滞留していたマガンの群れは姿を消してしまいました。主な越冬地である宮城県伊豆沼周辺まで南下したのでしょう。
文中の「赤い鳥」ですが、今季は一度記録したぐらいで、どうも当たり年ではないようです。
参考「ウトナイ日記」
※(公財)日本野鳥の会直営のバードサンクチュアリである北海道苫小牧市ウトナイ湖サンクチュアリの“今”をご紹介しています。
(2014-12-19)
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