日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリレンジャー
中村 聡
総目次
14: 春を告げるマガンたちの到来
今冬は寒さ厳しく、湖は12月に早々と全面結氷し、オオハクチョウなどは凍らずに残ったわずかな水面で冬を越していました。3月に入り、暖かい日があるかと思うと、大荒れの天気で一気に冬景色へと戻ってしまうなど、まさに三寒四温といったところです。とはいえ、ここ数日は「道の駅」前にも水面が広がり、春が近いことを予感させます。
この時期になると、再会が待ち遠しい野鳥がいます。それはマガンやヒシクイなどのガン(雁)類。9月から11月にウトナイ湖で羽を休め、その後は南下して宮城県などでひと冬を過ごしたガンたちが、繁殖地のロシアへ向かう途中の3月、再び当地を訪れるのです。まさに湖に春を告げる鳥。秋の数千羽に比べ、春は数万羽にもなり、一昨年は10万羽近くと過去最高を数えました。その大半を占めるマガンは近年、全国的にも渡来数の増加が確認されており、ウトナイ湖でも同様の傾向にあります。
春は、日中に湖面でガン類の姿を見ることがほとんどありません。なぜなら、湖はねぐら(夜を過ごす場所)としてのみ利用されており、ガンたちの多くは朝早くに飛び立って周辺の田畑で採食し、夕暮れ時に戻って来るからです。つまり、この時期に大群を観察できるのは、午前と午後のそれぞれ5時から7時ごろにかけて。天候に恵まれれば、赤く染まる空にガンたちが飛ぶ、壮大な光景に出会えるでしょう。
(原文は苫小牧民報「ウトナイ湖サンクチュアリ レンジャー通信」2013年3月8日掲載)
今年はマガンを2月21日に初確認(昨年は3月2日)し、8日に6万1千羽を数えた後、19日現在、約1万7千羽とすでに減っています。周辺の雪どけも進んだことから、ねぐらが分散しているのかも知れません。池には早くもエゾアカガエルの卵塊が見られます。例年に比べてかなり早い「北国の春」の訪れに、何だか戸惑っています。
参考「ウトナイ日記」
※(公財)日本野鳥の会直営のバードサンクチュアリである北海道苫小牧市ウトナイ湖サンクチュアリの“今”をご紹介しています。
(2015-03-20)
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