北*風のたより日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリ
レンジャー
中村 聡
総目次
16: 背後に迫る黒い影
あの時、「ガァー」と返したのが悪かったのかも知れない。以来、毎日のように黒い影に脅かされることになった。
僕が住処としたアパートは大きな公園の一角にあるが、そこはまた、カラスの夫婦が巣を構える場所でもあった。森や街中でよく見られるハシブトガラスだ。5月のある朝、公園を通ってバス停へと向かう僕の近くに1羽が飛んできて、ひと声「カァー」と鳴いた。今から思えばそれは威嚇の意味だったのだが、その時は巣が近くにあると気づかず、悪ふざけをして、つい「ガァー」と鳴き返してしまった。これが気にさわったらしい。
毎朝公園を通るたびに、すばやく僕の姿を見つけて飛んでくる。背後に気配を感じて振り向くと、まさに「キミがそこにいた」状態。歩く僕の後を追い、時々頭をかすめるようにすぐ横を通過しては、近くの電線や木に止まって誇らしげに鳴く。野鳥に恐怖を抱いたのはこれが初めてだった。ただ、こんな目にあうのもどうやら僕ひとりのようで、巣の真下で散歩を楽しむお年寄りには、全く向かっていかない。怪しげな人間をちゃんと識別するという、カラスの頭のよさを改めて認識した。
子育て中の野鳥はカラスに限らず、非常に神経質になっている。卵やヒナを守るために、時に人間をも攻撃する。それは十分理解できる。しかも僕の仕事は「野鳥とその生息地を守る」こと。ここはなんとか折り合わなければと、ひとまず公園を迂回して遭遇しないようにしたが、効果は長く続かない。目ざとく見つけて追ってくる。こうなればヒナが巣立つまで待つしかないか。「カァー」と声をかけられるたび、陰であっかんべーをしながらつぶやいている。「がまん、ガマン」と。
(原文は苫小牧民報「2007年06月25日」掲載)
今年は春の訪れが早く、大型連休中にエゾヤマザクラが咲き、現在は新緑の季節を迎えています。明るい林はクロツグミ、キビタキ、センダイムシクイなどのさえずりで賑やかです。
自宅前の公園では今年、ハシブトガラスに代わって、ただいまカササギが営巣中。この鳥、なぜか苫小牧で10年ほど前から繁殖を始め、今では市内各所で見られるようになりました。
参考「ウトナイ日記
」
※(公財)日本野鳥の会直営のバードサンクチュアリである北海道苫小牧市ウトナイ湖サンクチュアリの“今”をご紹介しています。
(2015-05-21)
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