日本野鳥の会ウトナイ湖サンクチュアリレンジャー
中村 聡
総目次
17: 気になるニューフェイス
僕の勤務する野生鳥獣保護センターには、野鳥に関する問い合わせが時々入る。内容で最近多いのは、ある鳥の名前を知りたいというもの。「何でしょうか」と自身で撮影の写真を持参してお尋ねになる方もいる。その鳥の特徴は、@カラスより小さい。A色は黒と白が目立つ。B尾が長くスマート。C決して美声ではなく、どちらかといえば騒がしい。
「ああ、あの鳥か」。皆さんの中には思い当たる方がいるかも知れない。正体は「カササギ」。といってもサギではなくカラスの仲間だ。もともと日本には生息していなかったが、16世紀に朝鮮半島より持ち込まれたとされる鳥で、現在は主に北部九州に分布する。カシャカシャという声から、地元では「カチガラス」と呼ばれ親しまれている。福岡出身の僕には馴染みがあるが、それ以外の場所ではあまり知られていないはずの鳥だと思う。
ただ俳句や短歌には古くから登場しており、大伴家持が詠んだ「鵲(かささぎ)の渡せる橋におく霜の白きをみれば夜ぞ更けにける」という歌は有名で小倉百人一首に収められている。歌中ではこの鳥が七夕に織姫と彦星を会わせるため、翼を並べて天の川に橋を渡す。鵲橋(じゃっきょう)という言葉は男女の仲を取り持つものという意があるそうだ。
さてこのカササギ、1990年頃からなぜか苫小牧市でも頻繁に観察されるようになった。長い間九州にしかいなかったのになぜ? その答えは、大陸から飛来したとも、人が持ち込んだとも言われるが、じつはよくわかっていない。市内での分布状況を把握しようと保護センターでは、この気になる新顔の情報を集めているところだ。枝を組んでつくった大きな巣や姿を見たら、ぜひ知らせてほしい。
(原文は「苫小牧民報」2007年4月28日掲載)
前号でも紹介したカササギ。センターに寄せられた情報はこれまでに千件にもなりました。当方から拾った羽根などを提供した研究者のDNA解析によって、苫小牧周辺に分布するカササギは、九州や韓国のものとは大きく異なり、ロシア(極東)のものとほぼ一致することが、つい最近、判明しました。また、遺伝的多様性が九州のものは極めて低いのに対し、苫小牧のものは高いという、非常に興味深い研究結果が出ています。ただ、「どこから来たのか」については依然不明のまま。船に紛れ込んでロシアからたどり着いたなど、推測の域を脱しません。
参考「ウトナイ日記」
※(公財)日本野鳥の会直営のバードサンクチュアリである北海道苫小牧市ウトナイ湖サンクチュアリの“今”をご紹介しています。
(2015-06-17)
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