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クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2018-11-20

シンボルマーク

録音でつきあう
野鳥の世界

田中良介

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目次

シンボルマーククロツグミは最高の歌い手

晩春から初夏(4月末〜5月、6月、7月はじめ)は、私たち録音をするものにとってはもっともワクワクし、楽しくかつ忙しい素晴らしい季節です。
そういうわけで、私は今年も各地に出かけて沢山の鳥の声を録音していますが、中でも英彦山は私たちにとっては聖地のようなところで、5月に二度(一度が二日)も出かけて英彦山ならではの夏鳥の素晴らしい録音を録ることができました。
アオゲラ、アオバズク、ミソサザイなどおなじみの鳥たちに混じって、今年はオオコノハズクやヤイロチョウ!など希少種の鮮明な鳴き声もゲットできました。
しかし、それらの鳥の中でも、私個人的には英彦山ではありふれた種類と言えるかもしれないクロツグミの鳴き声が大好きです。
皆さんおなじみの日本三鳴鳥と言えば、ウグイス、オオルリ、コマドリですが、ほかにもヒバリ、メジロやホオジロなど、また近頃は外来種ではありますが、ソウシチョウやガビチョウも歌い上手で、好みにもよりますが、良く鳴く鳥はたくさんいます。そうした中で、もう一度申しますが、私的にはトップに置いてもよいと思うほどよく鳴き、その上歌の中身が面白いのがクロツグミです。また、私はこのほかにもイソヒヨドリ、イカルと言った鳥の鳴き声も大好きです。
クロツグミ、イソヒヨドリ、イカル。これでお分かりになったと思いますが、私が好きな鳥たちの声に共通しているのは、やや低めの柔らかい声で鳴く種類です。これらの鳥の声が柔らかく聞こえるのは2〜3キロヘルツの音が鳴き声の多くの部分を占めているからです。柔らかい声での多彩な歌声に癒されるのは年のせいでしょうか。
というわけで、クロツグミの素晴らしいところは、私の好きな平均的に高すぎない声質と、加えて歌のバリエーション(変化)の多さです。大型のツグミらしく身体の大きさにふさわしい大きな声で長く鳴き続けるので、手持ちのライブ録音でも、またあらかじめタイマーをセットした放置録音でも比較的容易にその素晴らしい鳴き声を録音することができ、私自身過去にもっとも多くの録音ができた鳥と言っても良いかもしれません。
ではクロツグミはどんなふうに鳴いているか、野鳥関係の著作物に記載されているいくつか例を挙げてみましょう。
「キコキコ コケコケ キーイ キーイと大きく歌い、時にチリリリと鈴を振るような声を交える」(日本野鳥大鑑)「コッキィーヨ キコキコキーヨ キョッピー キョッピー キョッキョツ」(筑豊の野鳥)など、注目は「キ」と「コ」、「ヨ」と言う音が多く含まれていることです。これはツグミ科の共通項と言ってもよいかも知れません。ツグミ科らしい「キョロン」という音が入ることもあります。
また、クロツグミに限ったことではありませんが、とくにこの鳥はほかの鳥の鳴き声を自分の歌に取り入れています。ただ取り入れて真似するだけでなく自分流に編曲している(「歌う鳥のキモチ」より)と言いますから、歌がたいへん複雑になるはずです。よく真似ている例ではキビタキのさえずりの一節ですが、私が今年英彦山で録音した声では、なんとヤイロチョウの「ホーヒー、ホーヒー」という声をさえずりの冒頭に持ってきていたクロツグミがいました。
私が過去に録音したものを聞き返したところ、面白いものとして「キヨコ キヨコ チョットコイ チョットコイ」と鳴くものがあり、思わず笑ってしまいました。じつは、私の子供のころ、近所に清子ちゃんという同級生がいて、よく遊んだことを思い出したからです。
ところで、ほかの歌う鳥たちにも言えることですが、彼らが一所懸命に鳴くのはもちろん繁殖のためです。自分の遺伝子を次の世代に少しでも多く残したいと、それこそ喉を振り絞って鳴いている(学術的にはこの表現は正しくありませんが)のですが、面白いことに、未婚の鳥と既婚者とでは鳴き方に変化があると言うことです。
例外がまれにあるとは言え、当然前者は良く鳴き、後者は少し控えめとなる(参考:「歌う鳥のキモチ」)わけです。
身近な例では、里山の畑の端っこの高い木などで鳴いているホオジロが、繁殖期の最盛期になっても、一所懸命に鳴いている場合、そのオスはまだ相手がいないからだと言われます。ただでさえ高い空に向かって大きく口を開けて鳴き続けるホオジロを見るたび、聞くたびに私はその健気さに胸を打たれるのですが、結婚相手に恵まれていないからだと思うと余計に同情したくなるというものです。
さて、クロツグミはどんな場所で鳴いているか、この点については私が参考にする野鳥関連の書籍と私の体験から来る実感との間にかなりイメージの違いがありますので触れておきましょう。
私にとってバイブルとも言える「日本野鳥大鑑」では「木の梢にとまって鳴く」とあります。「時には梢の下の横枝で鳴くことも」とも。
しかし、私がおもに英彦山で録音したのでは、山の斜面の襞(ひだ)のような浅い谷の、それも樹木が密生していなくて、大岩がごろごろしているような場所が多かったのです。高い木の梢で鳴いている実感がないのです。
今まで何度も申していますが、私は原則的には鳴いている鳥の姿を見ながら録音することは極めて稀で、大概は無人録音です。ライブで録音する時も相手の鳥にプレッシャーをかけないようになるべく木の茂った枝や岩の陰から行います。
クロツグミも姿を見ながら録音したことは一度もないために何とも言えないのですが、録音場所、またマイクへの音の入り方から想像するに、決して高いところからの声ではないように感じます。確かに高い木の梢で鳴くことが多いのだろうとは思いますが、自然の中では状況によっていろいろなケースもありうると思っています。
クロツグミもご他聞に漏れず、もっとも鳴いているのは早朝ですが、繁殖の進み具合などによっては午前中遅い時間でもよく鳴き声が聞かれることもあります。
わが国で聞かれる鳥の中でも有数の歌上手、クロツグミの朗々とした多彩な歌を聞きに皆さんも少し高い山に出かけてみてはいかがでしょう。

(終わり)

(「野鳥だより・筑豊」2018年7月号 通巻485号掲載 2018-06-22掲載)

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