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クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2018-12-16

シンボルマーク

録音でつきあう
野鳥の世界

田中良介

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目次

シンボルマーク鳥名の由来雑学あれこれ

皆さんとはスタンスが少し違って、私の場合はおもに視覚障がい者の人たちのボランティアとして、野鳥や自然の世界を行動困難な人たちに楽しく伝える立場に立って活動しています。もう長くそのような立場での活動をして来たので、おかげさまで少しは私のしていることが知られるようになり、平均して年に1〜2回はいろいろな集まりにお声がかかります。例えば堅苦しい会議の気分転換に時間を頂いて、余興に鳥の声を聞いてもらって野鳥についての面白話をさせていただくといったこともやっています。ある時は点字図書館の利用者とボランティアの集いで、またある時は中途失明者の互助団体の定期大会でといった具合です。貴重な体験としては、“日本漢点字研究会”の総会が福岡市で開催された時に、「野鳥名の漢字と鳴き声」というテーマでお話したこともあります。
そうした体験を通して知った意外なことがあります。視覚障がい者の皆さんは、鳴き声がもちろん一番ですが、名前の由来や鳥の名の漢字に興味があるということです。
今回は見えない人にむしろ啓発されて私が多少勉強した名前の由来を、少し違った角度から再考してみようと思います。
かつて、本誌上に“野鳥の豆知識・日本に生息する鳥の和名の由来(1)、(2)”が掲載されています。内容としては極めてよく検証された立派な内容で、何を今更田中良介が!とあるいはお叱りを受けるかもしれませんが、私なりに自身の経験を踏まえて由来について一考してみたいと思います。
その前に、野鳥の世界をほとんどご存じない“私のCDのリスナーさん”からの素朴な質問などの中で、ある特徴的な間違いをされる鳥があります。それはミソサザイで、「ミソサザエ」と言われることがとても多いことです。サザイをサザエと聞き違えているか、または思い込みのせいでしょう。
前述の、本誌“日本に生息する鳥の和名の由来”では、サザイについて「古くから小さい鳥を指すサザキが転じてサザイと呼ばれるようになった」と記述されています。
私もまったくその通りだと思い、そのように“リスナーさん”に答えています。
日本の鳥の名前の由来を調べると、当然とは言え、多くが古くは奈良時代、あるいは平安時代にその原型があります。そうして由来について考証された結果、ある一つの“常識”が存在しています。
それは“メ”や“ス”が鳥の名を表す接尾語とする説明です。じつは、私も講演に招かれた時などにそのように安易に話をさせていただいていたのですが、私のCDのリスナーからお便りをいただいて鳥の名についてご説明する時に、最近になって安易にそのように言ってよいものか、疑問を持つようになりました。
なぜなら、“メ”や“ス”が鳥の名を表す言葉だとしたら、この類の和名が多くあってもよいはずなのに、じつは意外にもとても少ないと感じるようになったからです。
“メ”については、スズメ、ツバメ、カモメとその仲間ぐらいしかなく、“ス”はウグイス、カラス、カケスとその名を取った別種だけのように理解しています。と言うことは、“メ”と“ス”がつく名前の由来を洗い直す意味があるかもしれない。そんなわけで、今回はまず“ウグイス”と“カラス”について、私らしく少し斜めからの視線で再検証してみることにしました。
まず、「いかなれば 春来る毎にうぐいすの 己の名をば人に告ぐらん」(どうしてウグイスは春が来るたびに自分の名前を鳴いているのだろう)という和歌の存在です。このような歌のもととなっているのは平安の昔、人々はウグイスの鳴き声を「ウウウウクヒ」と聞いたからだとされています。これが「鳴き声が由来」説の根拠です。
一方で「う食い巣」(うくいす、“う”は群がり生えているところ、“食い巣”は巣食う、つまり巣を作って棲むのこと)という説があります。これは「“ス”が鳥の名の接尾語」説を揺るがす一つの論拠と言えないでしょうか。
では“カラス”はどうでしょうか。
「カラは鳴き声」とする説が有力で、これが普通に名前の由来とされていますが、私は敢えて「黒し」の転訛説を取りましょう。カラを鳴き声だとすると、“ス”が鳥名の接尾語としてカラにくっついた安易な話になってしまいます。
「可良須(からす)とふ大をそ鳥の真実(まさで)にも 来まさぬ君を ころくとぞ鳴く」万葉の時代にカラスの声を「カラ」のほかに「コロク」と聞いたことが分かります。これも“カラ”に“ス”をくっつけたものではないかも知れないという私の考証点の一つです。
“カケス”については「懸け巣」のそのままの読みと言うのが有力です。
というわけで、以上ウグイスとカラス、カケスについて、“ス”が必ずしも「鳥の名の接尾語ではないかも知れない」との無理やりな乱暴な話をしました。
なお、雑学的なことを少し追加しましょう。鶯の文字ですが、中国にもこの字が存在し、鳥の名として使われています。しかし、中国の鶯の字はおもにコウライウグイスのことです。二つの国で同じ漢字が鳥の名として使われているものの、鳥の種類がまったく違うのは面白いことです。
また、支部会員の皆さんの中には俳句をされている方がたくさんいらっしゃいます。私が取り上げるのもまことにおこがましいのですが、季語としてのウグイスは春告鳥、春鳥、匂い鳥、経読鳥、など雰囲気のあるもの、また愉快なものとしては“ほけちょい鳥”というのがあったりするようです。
「梅に鶯」という日本の伝統を感じる言葉があります。ほんとうは「藪に鶯」が正しいことは野鳥の会の皆さんならご存知のことです。実際に「竹に鶯」はあるようです。
日本の美意識に連なる言葉として、うぐいす餅、鶯菜(小松菜のつまみ菜)、鶯色などがあります。
色に関しては「ウグイスの色はどんな色?」との視覚障がい者からの質問がよくあります。そんな時にもしも皆さんならどんな風に答えてあげますか?
私は単純に「灰色」と言うことにしています。複雑な説明をすると目の不自由な私のリスナーさんが誤解をされる心配があるからです。なお、私がかつて南京で出会った1オクターブ高い声で鳴く中国のウグイスもそんな色をしていました。
カラスの古い異名として慈鳥、孝鳥というのがあります。これらはカラスの仔が成長すると、逆に仔が親に餌を与えるからとされますが、それは明らかに当時の人の見間違いで、カラスの雛が成長して親と身体の大きさが同じになっても、相変わらず餌を貰い続ける姿を勘違いしたのでしょう。
次回も鳥の名の由来について“斜め考証”をしてみようと思います。

(終わり)

(「野鳥だより・筑豊」2018年9月号 通巻487号より転載、2018-08-30掲載)

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