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クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2019-03-19

シンボルマーク

録音でつきあう
野鳥の世界

田中良介

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目次

シンボルマーク冬の里山、林の中で朝一番に鳴きだす鳥は?

皆さん広くご存知の通り、野鳥がもっともその存在感を示す鳴き声をあげるのは、一般に春から初夏、夏の始めにかけての繁殖期です。
例えばウグイスは繁殖期には「ホーホケキョ」や警戒の声とされる「ケキョケキョケキョ」といういわゆる谷渡りの声で盛んに鳴きます。しかし、これもご存知のように繁殖期とは真反対の季節、つまり秋から冬、そして早春にかけての頃にもじつは別の声で鳴いています。ウグイスの例でいうと、「ジャッジャッジャッ」と俗に笹鳴きと呼ばれる地鳴きをしています。
非繁殖期のこうした地鳴きは、厳しい季節を生き抜くための警戒音であり、仲間との連帯を確認する命を守る声だともいえます。
私たち録音をする者が一番嬉しいのは、もちろん美しい、そして興味深い声での鳴き声がたくさん聞こえる繁殖期ですが、秋から冬にも閑さえあれば野山に出かけて、地鳴きしかしていない、そして繁殖期に比べれば圧倒的に寂しい鳥たちの声を録音しています。今一つには、じつは私の場合はフクロウの声が少しでも録音できればとの思いもあって秋・冬も出かけている一面があるのですが、その訳はまた機会をあらためて取り上げたいと思っています。
いずれにせよ、冬の寒い里山でも鳥たちは何らかの声を出しています。
私はほとんどの録音ではタイマーをセットしての放置録音を行なっていて、朝一番のレコーダーのスタート時間をだいたい夜明け前30分に設定しています。
そのように設定することによって、運が良ければフクロウのいわゆる“残業”の声も期待できる上に、ほかの野鳥(留鳥、漂鳥、冬鳥)たちの冬ならではの声の鳴きだしから録音することができます。
さて冬の里山での録音に入っている声はウグイスやシロハラなどの地鳴き、ほかにはキジバト、シジュウカラ、ヤマガラ、メジロの地鳴き、コゲラやアオゲラのドラミングの音などですが、朝一番に声が聞こえだすのはどの鳥だと皆さんは想像されますか?
答えはシロハラです。一概にそう決め付けるのは間違いかもしれません。時にはヒヨドリが早々に鳴き出して、私を“泣かせる”こともないわけではありませんから。
しかし、私の長い経験で申し上げるなら朝一で声が聞こえるのは圧倒的にシロハラです。その理由の一つには冬の低山(いわゆる里山とよばれる環境)の林に、多くのシロハラが渡ってきていることがあるのだと思います。
また、シロハラがとても活発に行動する鳥であるという証明でもあるのでしょう。
では冬の里山で朝一番に鳴きだすシロハラの鳴き声はどんな声でしょう。
後段で取り上げますが、シロハラのさえずりは、多くの野鳥本ではアカハラに似た「キョロ、キョロ、キョロン」と書かれていて、地鳴きは「キョッキョッ」とされています。はたしてそうでしょうか?
さえずりの声は後回しにするとして、まずはこの稿のタイトルに沿っての話です。
“一番に鳴きだすシロハラ”はどんな声で鳴くかですが、いろいろな聞き方、表記の違いがある野鳥の中でもシロハラの地鳴きは、例えば数ある野鳥本の著者によってもあまり違いはありません。ほとんどは「キョキョキョ、チャッチャッチャッ」と鳴く、とあります。
事実そのとおりなのですが、これらの表記をした著者は必ずしも朝一番の地鳴きの声を聞いているわけではないと思われます。
私の場合は、前述のように前の日のうちからレコーダーにタイマーをセットして置くので、夜明け前の静まりかえった冬の里山の林での録音ですから、文字通りの朝一のシロハラの声を、それも今までに数十回、場所も標高も別々な例を聞くことができました。ほとんどのケースで朝一番の声は「キョッキョッキョッ」で確かに始まりますが、でもそれは始めの数声だけで、そのあとは大きな激しい声での「チャッチャッチャッ・・・・・」とずっと鳴き続けることが多いのです。
冬越し中のシロハラは昼の間、多くは林の地上で餌を探していることが多いのは皆さん先刻ご承知の通りですが、夜寝る時はさすがに低い木の枝に止まっていると思います。
そこで一つの疑問が生じます。木の枝で朝を迎え(実際にはまだ辺りは暗いはず)、目覚めたシロハラは第一声を出す時、木の枝の上で出すのか、または地上に降りてから出すのか、ここをとても興味深く想像して見るのですが、じつは分からないのです。とにかく冬の朝、低い里山の林で“一番に声を出す”のはシロハラという結論で間違いないと思います。
地鳴きの話をしたらさえずりについても言及しなければならないでしょう。繁殖期を控えて渡りの時期が近づくと、(1月からさえずった例もありますが)、シロハラたちは群れを作り始めます。そんな群れからさえずりが聞こえて来ることがありますが、やはり本格的なさえずりは繁殖地で聞くのが一番です。
福岡から近いシロハラたちの本格的な繁殖地はやはり韓国で、私は過去3回の韓国録音旅行でたくさんのシロハラの良い鳴き声を聞き、録音を録ることができました。
何度も申しますが、鳴き声は聞く人により、また書く人によりその音の表記はさまざまです。多くは「キョロン、キョロン、チリリ」とアカハラに似た声でさえずるとあります。ここでもはたしてそうでしょうか、と疑うのは長く録音をして来た私の悪い習性ですが、シロハラも個体により、またさえずりの途中で声やメロディに変化が生じることがあり、一概にこう鳴くとは決められないと実感しています。
「ピョロン、ピョロン、ピョロン」、「ポピリョン、ポピリョン」、「チヨチヨ、ピピョ、ピヒヨ」、「チョ チィー チョー チョリ チリリ」、「ピリョン、ピリョン、ピリョン、チリリリーッ」、これらは「キョロン、キョロン、チリリ」のほかの表記の例で、これを見ただけでも決して「キョロン、キョロン、チリリ」だけではないことが分かります。私の好きな金子みすずの詩のように「みんな違ってみんないい」のですが、私自身は韓国・全羅南道の智異山・華厳寺(チリサン・ケゴンジ)への参道の両側の林の中での良い録音では次のように聞こえました。
「チョッチョッチョッ、チュー、ピョリン、ピョリン、チリリ」また「チュオ、チュオ、チュオ、チューチュー、ピリン」(そのほかいろいろ)。
なぜか私には「キョロン」とは聞こえなかったのです。
聞こえ方はいろいろあれど、シロハラのさえずりは綺麗で可愛いです。

(終わり)

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