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クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2019-09-21

シンボルマーク

録音でつきあう
野鳥の世界

田中良介

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目次

シンボルマーク2019年台湾での録音報告 第1回

皆さんもよくご存知の通り、台湾の生態系は素晴らしく豊かです。植生の豊かなこと、昆虫種類も多く、なにより美しい野鳥もいっぱいいます。
たまたま5年前の2014年、台中市に在住の野鳥研究家Sさんを別の台湾の知人から紹介していただき、初めて台中市郊外での録音に出かけました。徹底的に親切なSさんのご協力で台中市新社区とその付近の標高約500mの里山、そして素晴らしい自然が魅力の大雪山・標高1800m〜2000mあたりでの録音を経験しました。
その時には台中市で一週間を過ごした後、私一人で台北市に移動、大安森林公園などでの録音を行い、全部で37種類の鳴き声を収録できたのですが、そのうち私の活動で制作しているCDに採用できる質の良いものはおよそ10種類のみでした。
私が録音する時に心がけている基準があります。まずは1個の録音ファイルの長さが3分以上であること。通常“声の図鑑CD”などでは多くの種類を集録するために、1種類の鳴き声は30秒〜1分程度に設定されているものが多いのですが、私の制作する野鳥の鳴き声が入ったCDは観賞のためのものなので、出来るだけ長く鳴いて欲しいのです。もう一つ重要なのは音の質です。なるべくノイズがなくてクリアなものを求めたいのです。これは鳴き声を扱う以上目的を問わず大切なことです。
その意味で、前回2014年の録音37種のうち上記2項を満たすものは10種類ほどしかなかったと言うわけです。
その時に良い録音を録り損ねた種類が10種類ほどあって、そのことがまるで私の喉に刺さった魚の骨のように残っていて、年齢を重ねるごとに痛みのように執着が増してきました。最近は年齢による体力もどうやら限界が近づいたのを感じるようにもなったので、その後も折に触れてメールで交流があるSさんが今回も受け入れてくださることになり、人生最後の台湾への録音の旅を計画しました。
出発の時期については、当初は前回と同じくピークが3月下旬になるよう3月20日前後を想定していたのですが、Sさんから「今年は暖かくて季節が早く進んでいる、1週間早く来ませんか?」とのアドバイスを頂いたので、あわてて準備を進めました。
台湾は暖かいと言っても、Sさんの自宅付近および今回宿泊させていただくことになったSさんの農園にあるロッジがある標高は500〜600m、またおもな録音地になる大雪山の2000m付近の気温、そして旅の後半を過ごす盆地である台北の気温を考えて、対応する服装の準備、持参する録音機材やバッテリーと充電機器、何より記録メディアなどそして私の持病のための薬を準備し、航空券を予約するなど一人旅ならではの準備に10日かかり、結局3月13日(水)午前の便で出発しました。
じつはSさんのせいではないのですが、このことが結果的にはマイナスに働いてしまったことは否めませんでした。この10日の間に現地ではそれまでの暖かさは嘘のように低温の日々が続いていたのです。そのことは季節の後戻り現象を生んでしまい、野鳥たちはいるにはいるが鳴き声をあまり上げなくなった種類が出てしまったのです。
そんなことは露知らず、予定通り3月13日の午前、福岡国際航空からチャイナエアー機で意気揚々と出発と言いたいのですが、いろいろ私の航空券の手続き上の問題があっために搭乗に時間がかかったり、当該機が私のせいではなく、多分満席状態であったための出発の遅れで大幅に離陸が遅れるトラブルに見舞われて、台湾新幹線(高鐵)台中駅で私を待っていてくれたSさんに迷惑がかかってしまいました。
それでもSさんは、5年前と変わらない優しい笑顔で迎えてくれました。以後6日間Sさんの献身的なお世話になることになります。
Sさんの住む台中市郊外の標高約500mあたり、そして私が宿泊させていただいたSさんの農場のロッジ(同600m付近)は、昼間の気温が15〜16℃、夜の気温はぐっと下がり多分5〜6℃の寒さだったのですが、寒さに震えつつ夜はたった1人だけの生活が始まりました。寒さに震えながらも冷たいビールを1人飲みました。
この点が私の一人旅の特徴で、探鳥ツアーに出かけられる皆さんの団体での賑やかな旅とは180度違うところです。この旅行記を書かせていただく所以もそこにあるわけで、一人の録音マニアが経験した台湾の野鳥とともに、一人旅ならではの視点での旅の体験を何かの参考になればと、これから何回かに分けて皆さんへの報告の形で、私の旅を回顧する拙文を書かせていただきたいと思います。
さて、寒さに震えた初日の睡眠時間はわずかに3時間半、旅の2日目の午前4時にはSさんと早速大雪山に出かけました。
標高600mの地点でも5〜6℃の寒さですから、その日の目的地である1800m以上の大雪山ではもっと気温が低いことが予想されます。持参した上着をすべて着込んでさあ出発。
きっともう何百回もSさんは走ったであろう大雪山の遊楽道路。カーブを数え切れないほど通過して高度を上げて行きました。この道路に入って約1時間、標高1800m地点で車は止まり、まずは今回の録音旅1回目の録音です。辺りはまだ暗いのですが、もう道路わきの深い森から数多くの鳥たちの声が聞こえてきます。
その中に、私が今回の録音旅行で希望種の1位に挙げていたミヤマテッケイの「コロロロ、コロロロ、コロロロ、ピューホー、ピューホー、ピューホー・・・」という大きな声がいきなり聞こえてきました。間近に、それも2〜3羽いるようです。
Sさんにも手持ち録音を手伝っていただき早速録音しました。いきなりの成果に寒さを忘れます。ミヤマテッケイの合間に「ヒィーッ」と大声でルリチョウの森を切り裂くような鋭い声も間近に聞こえます。
すぐ近くにいるはずですが、両種とも深い森の木々とまだ明けない暗がりの中なので姿はまったく分かりません。また見えたとしてもあえて見ないというのが私のモットーです。録音中はひたすら目を閉じるようにして録音に集中し、満足な録音ができた後、まだその鳥がいてくれたらそこで初めてその姿を見る、と言うのが私のやり方です。それにしても夢に見た(聴いた)鳥の声が最初に良い状態で幸先よく録音できました!その後もタイワンコノハズクなど次から次と憧れの鳥たちが鳴いてくれました。それは次回で紹介することにします。

(第1回おわり)

(2019-04-19掲載)

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