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クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2020-01-28

シンボルマーク

録音でつきあう
野鳥の世界

田中良介

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目次

シンボルマーク2019年台湾での録音報告 第4回

今年二回目の台湾録音行を計画段階で、ぜひとも録音を成功させたい鳥種を22種選定して、孫清松先生とも共有しておりました。これら22種の2番手に上げたのが“カンムリワシ”です。
私はもともとワシタカ類の鳴き声が好きで、すでに今までに、サシバ、トビ、ミサゴのよい鳴き声を録音しています。彼らに共通するのは大きな身体に似合わない高い透明感のある可愛い鳴き声です。
録音作業での共通点は、トビやサシバなど飛びながら鳴くので、良い録音を録ることが難しいことです。しかし、トビについてはたまたま高い木の枝や、電柱に止まって鳴いているところに遭遇して、間近に長く鳴く声を録音することができました。
問題のカンムリワシですが、台湾では低い山地で良く見かける鳥なので、録音はそう難しくないように思いますが、前回2014年に訪台の折は、台中市郊外の農村地帯で何度も遭遇しながら録音には失敗しました。
それには二つの理由があって、一つには低いとは言え、上空を滑空しながら鳴いているのでマイクで追うのが大変なこと。二つ目には、農村地帯で働く人たちの話し声や、農作業中に絶えず流されているラジオの音楽などが邪魔になってしまったからです。
そのような事情で、今回はぜひクリアで、長く鳴いてくれる声をものにしたいと考えていました。
今回の録音旅行では前半の6日間を、台中市郊外・標高およそ600mにある孫さんの農園にあるロッジに滞在させていただきました。後ろは低い山となっており、周辺はたくさんの畑が広がっていますから、カンムリワシが姿を現すには絶好の場所だと孫さんも太鼓判を押してくれていたのですが・・・。
確かに毎朝、そして1日を通して何度もカンムリワシは姿を現してゆっくり飛行してくれましたが、とんでもないノイズがあってよい録音は録れないことがすぐに分かりました。一つのノイズは周辺の農場で飼われている多数の放し飼いの番犬たちの鳴き声です。またその辺りの土地が別荘地として人気が出た為に、建物が建設される工事音やトラックなどの走行音です。
さらに厄介なのは、孫さんが生活されている郊外の町・新社区には台湾空軍の基地があって、月曜から土曜日まで、朝9時から午後5時までは毎日戦闘用ヘリコプターである“アパッチ”が2〜3機飛行訓練を行なっていました。近い距離では孫さんの農園の真上まで飛来します。攻撃用ヘリコプターのエンジン音は半端なく大きくて、2km位離れていても町の地形が割りと平坦なのですごい騒音となって届いてきます。
農園付近ではほかの鳥たちもいろいろと近くで鳴いたのですが、アパッチが訓練中はまったくお手上げでした。
台中市の3日目、孫さんに誘われて午後から隣りの区・大平区の里山に出かけました。そこは山と山が近くて平地が少ない為に開発がされていない静かなエリアでした。その谷あいの数ヶ所にタイマー録音を数台仕掛けておこうという計画でした。行ってみると、いかにも野鳥たちがたくさんいるようで、ここでの目的であるフクロウ類や台湾ガビチョウなど期待できそうな雰囲気の場所でした。
孫さんとレコーダーの設置場所を探して浅い谷間の道を歩いている時、反対側の低い稜線からカンムリワシの声が聞こえてきたのです。
私はすぐに谷の向こうの稜線付近の低い空を見回しましたが、姿はありません。ただ鳴き声は続いています。ということは、珍しいことにそのカンムリワシは樹木に止まって鳴いていたのです。絶好のチャンス到来!私はすぐに手持ち用のレコーダーの録音スイッチをオンにして、鳴き声の方向に向けました。
「ホ、ホ、ホ、ホェー、ホェー」と私の大好きな鳴き声が続きます。私は隣にいる孫さんに向かって片方の手の親指を立てました。鳴き声は2分40秒続きました。その後は飛び去ってしまいました。しかし、良い録音となりました。
カンムリワシ二回目のチャンスは、台北の街外れに移動後、台北での日々をサポートしてくれた台湾野鳥学会の会員である葉さんと、宿舎近くの里山に出かけた時のことでした。じつは前日からレコーダーを設置して置いたものを回収していたのでした。そこは逆U字型に三方を低い山が取り囲んだ地形となっていて、真ん中の窪地が畑となっていて数軒の農家がありました。
畑の外れの細い農道を歩いている時に、私達の背後からカンムリワシの声が聞こえて来たので私たちは急いで振り向きました。低い山の稜線からちょうど一羽のカンムリワシが姿を現してゆっくりと旋回飛行をしながら鳴いています。私はあわててレコーダーを用意して録音スイッチを入れてその方向へ向けました。すると、稜線に2羽目が出てきました。「2羽だ!」と葉さんが声にしない声で叫びます。すると次に3羽目が…。私たちが「おう、おう」と言っている間に次から次とワシたちは姿を増し、とうとう最後は7羽の群舞となり、やがてまた稜線の向こうに消えて行きました。その間、およそ5分間、合間に農作業をする男女の声や足元の草むらで鳴く蛙の声が入ったものの、私の好きな音の風景が録音できました。
この時の鳴き声では、普通に聞く「ホ、ホ、ホ、ホェー、ホェー」のほかに「ヒィーッ」と言う声が入りました。もしかすると繁殖期の群舞で、「ヒィーッ」はメスの声だったかもしれません。
余談になりますが、日本と台湾の野鳥図鑑に面白い違いがあることに気がつきました。カンムリワシの大きさについて、
@フィールドガイド日本の野鳥では、L55cm、トビより小さいと記述。一方、A台湾の野鳥300図鑑の中では、トビはL58−59cm、カンムリワシはL65−74cmと、トビのほうが小さいと記述されています。
私が見た感じでも明らかにカンムリワシはトビよりひと回り大きく見えました。
この原因について、@は日本国内の生息地である南西諸島の個体についてのみ調べたのでしょうか? どなたかご教示くださると嬉しいです。

(第4回おわり)

(「野鳥だより・筑豊」2019年8月号・通巻498号より転載)

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