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クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2020-10-22

シンボルマーク

録音でつきあう
野鳥の世界

田中良介

目次

シンボルマーク録音活動を回顧して・外国での録音 韓国編その1

前回まで北京オリンピック前年、つまり2007年までの3年間にまたがる中国各地での旅の思い出と野鳥にまつわる記憶をたどりつつ拙文を書かせていただきました。今回からは、20011年に経験した韓国での野鳥録音の旅の思い出を、半分は旅行記のような内容になることを予めお許しいただくとして綴って行きたいと思います。
そもそも、なぜ韓国や台湾など外国への録音旅行をするかと言うことをお話しておかねばなりません。私は野鳥の鳴き声を録音して、それに私の拙いお話を加えてCDを制作して、自然や野鳥の鳴き声が好きな全国の行動困難な人たちへプレゼントしています。CDは1年に1作ですが、毎年福岡県内だけでの録音ではネタが限られていて、リスナーさんに飽きられはしないかと心配になるのです。その問題を補う為に、数年に1回は、私が行動できそうな近隣の国々へ出かけることになったわけです。
私が韓国での録音旅行を思いつくことに至ったのには2つの理由がありました。
一つは、2006年初夏に、糸島市南部の雷山の麓で、まったくの偶然と幸運で渡り途中のコウライウグイスに出会うことができ、その鳴き声を録音できたことです。高麗ウグイスというからには、韓国に行けば、もっと多くのコウライウグイス、そして他の多くの野鳥にも会えるかも知れないと、その時単純に思いました。
二つ目には、たまたまNHK・BS放送で五木寛之さんの番組「21世紀の仏教・韓国編」の中で、慶尚北道の太白山浮石寺が紹介されました。見るからに豊かな自然に包まれた韓国の仏教寺院の静かな佇まい、いかにも野鳥とたくさん出会えそうです。
この2つの理由で、単純な私は「よーし、韓国に行って珍しい鳥たちと出会うぞ」と、肝心の韓国語の読み書き会話がまったくできないのをそっちのけにして、旅のスケジュールを立てることに数日間没頭し、準備もそこそこに博多港からまずは釜山さんに向けて出発したのでした。
現在の韓国は、もちろん宗教の自由が保障されている国ですが、歴史的には14世紀末に李氏朝鮮王朝が始まると、儒教が国教とされて仏教は徹底的に弾圧されます。
多くの寺院は廃寺に追い込まれますが、一部の仏教勢力は山中へと逃れ、やがて勢力を回復して大寺院へと変貌して行きました。現代韓国仏教大寺院のほとんどは山の中にあり、多くの若い僧が日夜厳しい修行をする、わが国で言えば永平寺、比叡山そして高野山のような修行中心の寺院となっています。韓国各寺院の背後には大自然があり、緑が多く(松が多い)、野鳥もたくさん鳴いています。
また、こん日の韓国仏教寺院には便の良いバスが入っています。周囲の山々は風光明媚なところが多く、信仰の場であるとともにハイキングや登山、デート目的の若い恋人たちも多く出かける場所となっています。
一方で考えておかなければならない問題があります。それは朝鮮半島では未だに南北が戦争状態にあり、ただ今は休戦しているだけ、そのことを忘れてはいけません。
と言うことは、下手に山の中を動き回って軍事施設に迷い込むようなことは絶対に避けなければなりません。私の旅はいつも一人旅です。旅行仲間も、現地のガイドもいません。いつも、どこでも自分で考え、自分で行動しなければなりません。
そのような点からも、山の中の大寺院を巡る旅は安全でかつ移動の計画が建てやすいのです。 “寺に行けば山がある、山があれば鳥がいる、なにより行きやすく安全だ”との結論に達して以下のような計画を練りました。
まずは釜山(プサン)を振り出しに、慶尚南道・通渡寺(トンドサ)→慶尚北道、慶州(キョンジュ)・仏国寺(ブルグクサ)→慶尚北道、安東(アンドン)・河回村(ハフェマウル、両班を多く出した村)→慶尚北道、栄州(ヨンジュ)・浮石寺(プーソクサ)→忠清南道、扶余(プヨ)・扶蘇山(プソサン)→全羅南道、全中(チョンジュ)・金山寺(クムサンサ)→全羅南道、木浦(モッポ)→全羅南道、順天(スンンチョン)・松広寺(ソンガンサ)→全羅南道、智異山(チリサン)・華厳寺(ファーオムサ)→釜山、金井山(クムジョンサン)・梵魚寺(ポモサ)
以上が旅の目的地と訪問順です。このうち、河回村、扶蘇山、木浦の3ヵ所は寺院ではありません。これらの地は私の拘りで、韓国に行くのならぜひ訪れたいと、かねてから強く願っていた場所です。その訳は、それぞれの場所を訪れた記述の中で記したいと思います。
さあ、いよいよ2011年5月27日午前博多港発釜山行きの高速船ビートルに乗って韓国への旅に出発しました。
翌日朝、釜山から地下鉄とバスを乗り継いで、最初の目的の寺院である慶尚南道の「通渡寺(つうどじ・トンドサ)」を目指しました。
あいにく当日は土曜日となってしまい、ハイキングやレジャーを楽しむ人たちが多いと言われる通渡寺なので少々気がかりでしたが、地下鉄1号線で終点の“老園(ノポ)”
へ、そこからバスで寺に着きました。緑の木々も多く、川もあります。
とても気持ちが良い所でしたが、懸念していたとおり、たくさんのレジャーと参詣客がいてとても録音にはなりませんでした。独特の様式美と色彩に溢れた韓国寺院の素晴らしさに始めて接して感動の時間を過ごすことは出来たのですが、間近に聞けた鳥と云えば、境内のいたるところで繁殖中のムクドリぐらいでした。
門前町の小さな食堂に上がりこみ、遅い昼食を食べたあと、“老園(ノポ)”のバスセンターに戻って、別の高速バスに乗り換えて、その日の二つめの目的地である“慶州(キョンジュ)”へと向かいました。
さて、2カ所目の目的地である“仏国寺”について触れておきましょう。
そもそも韓国寺院は李王朝のせいで弾圧を受けたものの、一部の仏教勢力は山の中に寺を建てて力を取り戻します。しかし、16世紀末に豊臣秀吉が二度に渡り朝鮮に出兵した折に、多くの仏教寺院は破壊され焼き尽くされました。
私が訪れることになる“仏国寺”も、こん日たいへん立派な伽藍を持つ寺で、見る者の目を奪うほどですが、秀吉の出兵による破壊前は、現在の10倍の規模を誇ったと言いますから、当時の寺院勢力の栄華のほどは想像をはるかに超えます。
期待十分だった韓国3日目の訪問地である慶州の仏国寺(ブルグクサ)は、あいにく雨となってしまいました。雨にも関わらず日曜日の境内は参詣者と観光客で一杯。録音どころではなかったのですが、印象的なことがありました。寺を囲む緑の山からカッコウの声が聞こえてきました。すると、私の目の前にいた少年が「カッコウ、カッコウ」と真似たのです。当たり前のことですが、韓国でもカッコウと鳴き真似をすることを知り、とてもそのことが新鮮に思えた瞬間でした。以下次号で。
(おわり)

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