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クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
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modify:2021-10-23

シンボルマーク

録音でつきあう
野鳥の世界

田中良介

目次

シンボルマーク録音活動を回顧して・外国での録音 台湾 その1

前回まで9回に分けて韓国各地での録音の旅について書かせていただきました。
このあとは、2014年に経験した台湾での録音の旅で経験した思い出を、私自身懐かしく振り返るとともに、皆さんのご参考になる点などをご紹介していきたいと思います。
中国での録音の経験と、2011年に韓国各地を回ったことで、福岡県内での録音行ではけっして得られない鳥種の多さであったり、行った先々での見聞を経験して、近隣諸国に出かけることの楽しさを知った私は、次の目標を台湾におきました。
台湾については、具体的な知識はほとんどなかったのですが、たまたま私の友人の友人である台湾人のS氏が台北市でビジネスをしていて、この彼がとても日本人に親切であり、力になってくれるはずであること、また、たまたま購入できた“台湾の野鳥300図鑑・日本語版”の一冊で、台湾がまるで野鳥の宝庫であるような印象を受け、例によって無鉄砲な貧乏一人旅に出かけました。
時期については、春の渡り鳥が九州よりおよそ半月前に台湾を通過することから、3月半ばに最南部をスタートし、野鳥たちとともに私も北上するという漠然としたイメージを持って出発しました。
旅立ちの前に、友人を介して台北のS氏と電話で何回かコンタクトを取り、その結果、台中市の著名な野鳥研究家である孫清松先生をまず紹介してもらうことができました。孫先生が日本語の読み書きも堪能な方であったことはとてもラッキーでした。
そこで、次に私が直接孫先生とメールで連絡を取り合って、台湾最南部の自然や野鳥に詳しいR氏を紹介してもらいました。同時に孫先生がR氏に私のことを紹介し、サポートの約束を取り付けてもらうことができました。
こうして2014年の3月18日朝、福岡空港からの飛行機に乗り、まず台北へ飛び、次は台湾新幹線(高鐵という)で高雄まで行き、孫先生が教えてくれたホテルでその日は一泊。笑い話ですが、このホテルと言うのがじつはラブホテルで、私は台湾での初めての一人旅(私が主催する視覚障がい者と一緒の旅で台湾はすでに経験済み)で、まさかこんなところに宿泊するとは・・・少しトホホな気分でありました。
翌朝、バスセンターからバスに乗って最南部の主要な町である恒春半島・屏東県の恒春に向かいます。この移動方法も孫先生の指示でした。
ところで、このバスセンターではタクシーの客引きがいて、長距離を移動しそうな人にうるさく付きまとって勧誘するのですが、その時に異様な感じを受けたのです。
何かと言うと、およそ50代と見えるおじさんたち客引きの何人かの口が赤いのです。
またやたらとツバを吐いていました。そんな一人につきまとわれ迷惑したのですが、「バスに乗る」と毅然としてタクシーを断ると、赤い口をしたおじさんは「そうかい、そうかい」と言った調子で、なんと私のキャリーバッグを押して恒春行きのバスまで案内してくれたのでした。はじめはしつこさに辟易した私も、バスに乗る時には親切だったおじさんにお礼を言うことになってしまいました。それが台湾の人だとも言えます。一人旅では小さなことでも、人の親切はとてもありがたく感じるものです。
やがてバスが出発し、高雄から南に向かう街道を走る頃、バス道の両側に並ぶ商店の中に、かなりの割合で「檳榔」の看板が目に付くようになり私は合点ができました。あのバスセンターの客引きのおじさんたちの赤い口はこれなのだと。いつか機会があれば紹介したいと思いますが、これはビンロウという独特の趣向品なのでした。
さて、前もって孫先生が連絡を取ってくれていたので、R氏は恒春のバス停で私を待っていて、暖かい笑顔で私を迎えてくれました。余談ですが、R氏とは初対面からの丸5日間を英語でコミュニケーションをとることとなりました。
まずはR氏の車で、彼が懇意だという、清潔で庭がとても広いリゾートホテル“天際線”(水平線の意)に連れて行ってもらい、宿泊手続きのあと荷物を置いて一休み。
お茶を飲みながら私の録音第一希望種である“オオコノハズク”について情報を聞くと、なんとR氏は「ベリーイージー!」と言うではありませんか。オオコノハズクは
私にとってはまさに幻の野鳥で、どんな声でも良いからとにかく録音したいと熱望していた鳥でした。台湾旅行を計画してまず手に入れた前述の“台湾の野鳥300図鑑”で、最初に開いたのはオオコノハズク(Collared Scops Owl)のページでした。
その記事によると、この鳥は台湾では何処にでもいて、いつの季節でも容易に見ることができるとの記載があったのです。鳴き声は「ポッポッポッ」と鳴くとありました。
さて、その夜から早速オオコノハズクに出会いに行くことになりました。
本来の旅なら、まずは到着の夜は、ゆっくりとビールを飲んで、外国とは言え割りに近い、それでも我が家を出てから2日がかりの旅の疲れを溶き解したいところなのですが、なにしろオオコノハズクは夜にならないと鳴かない鳥。その上に、R氏はまったく酒は飲まないとかで、暗くなったらすぐにR氏が迎えに来てくれて出かけました。
R氏は相変わらずオオコノハズクとの遭遇には楽観的で、「まずは市内の中学校に行きましょう、校庭の隅の木立ちの中で鳴いているはず」と言います。すぐにその中学校に到着、車から降りて当直の先生に挨拶した後、問題の校庭の隅に行きました。しかし、鳴き声らしきものは何も聞こえてきません。
当直の先生も駆けつけてきてくれて、皆で暗い空を見上げて耳を澄ますのですが、何一つ音が聞こえて来ないのでした。
「あれー、不思議だなあ、昨夜は鳴いていたのに」。「どんな声でしたか?」私が聞くと、「あの鳥の声はポッポッポですよ」と、何を当たり前のことを聞くのだと言わんばかりの返事が帰って来ます。つまりは、「ベリーイージー」に聞くことができる鳥の鳴き声だという感じなのです。ところがその声が聞こえてこないのです。
R氏は「では次のところに行って見ましょう」、そう言って、私を再び車に乗せて走り出しました。向かった先は、市内を見下ろす小高い丘の上、辺りは草地の中に背の高い木々がまばらに生えている場所でした。ちょうどその頃から風が強く吹き始めてきたのですが、それはともかくここでもオオコノハズクらしい鳴き声はまったく聞こえてきませんでした。頭にライトをつけて、草地を縫うように続く小道をどんどん進んでも状況は同じでした。「なぜ?なぜ?」を連発しながらR氏は先に進みますが、ほんとうになぜか鳴き声は聞こえてこなかったのです。
折からの低気圧の接近で風はますます強くなりました。私が思ったのは、この天候の悪変が原因だったのではないかと言うことでした。
この夜の収穫は、太い一本の木の幹でライトに浮かび上がった、巨大なナナフシが見られたことだけでした。(おわり)

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