波多野邦彦
総目次
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波多野邦彦 掲載日2020-12-29
本年も「探鳥トラバース」「独断と偏見の識別講座」をご愛読いただきありがとうございました。
個人的な事情から毎月の連載スピードが落ちてしまいご迷惑をおかけしております。当面は不定期掲載となりますことをご容赦ください。昨冬シーズンは様々な野鳥が観察されましたが、この冬はどうでしょう?!
コロナに負けず、来年も皆様の益々の御健康と御活躍をお祈り申し上げます。
昨冬シーズンの野鳥
カツオドリ、ヨーロッパムナグロ、オオタカ、コミミズク、ヘラサギ&クロツラヘラサギ、アネハヅル、タカサゴモズ、ソリハシセイタカシギ
(2020-12-29掲載 第81回)
波多野邦彦 2017-11
(クリックで拡大・縮小)
ちょうど3年前、2017年11月沖縄県那覇市の記録です。
日本国内のカワセミの仲間はこれまでに7種類が確認されています。ナンヨウショウビンはインド、東南アジア各地、ミクロネシア、ニューギニア、オーストラリア北西部などの沿岸地域に広く分布しています。
大きさは約27cmでアカショウビンとほぼ同大。基本的にエメラルドグリーンと白の鮮やかな色彩ですが、数十種類の亜種があり亜種毎に羽衣が変化します。嘴と脚は灰黒色で下嘴基部は薄いピンク色。日本国内では南西諸島を中心に記録があり、マングローブ林などで観察されます。
通常はごく短期間で飛去する場合が多いのですが、この時は那覇市漫湖のマングローブ林に長期間滞在しました。餌取りは豪快で、干潟上スレスレをブーメランのように大きく弧を描いて飛び、大型のカニを掠め取っていきます。
画像は採餌で飛び回った後、休んでいるところ。
(2020-11-25掲載 第80回)
波多野邦彦 2020-11-06
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11月6日地元(@5030-5389)でメジロガモ♂エクリプスを観察しましたのでご報告します。
(※ 現地には1日のみの滞在で既に飛去しています。)
エクリプスとはカモ類などの雄が換羽して一時期雌のような地味な羽衣に変わります。この羽衣のことをエクリプスと呼び、秋日本に飛来したばかりの頃によく見られます。
メジロガモはユーラシア大陸からアフリカ大陸の温帯や亜熱帯にかけて、淡水域に生息する種類です。国内ではホシハジロなどの潜水採餌ガモと一緒にいることが多く、今回観察した個体もホシハジロの群れと行動を共にしていました。
メジロガモ、ホシハジロやアカハジロなどは相互間でハイブリッド(交雑)がしばしば見られます。近年は特に交雑個体が多いため、識別には注意が必要です。頭の形・色彩、虹彩の色、嘴の形状・色彩と嘴爪及びその周辺の色彩、翼の白帯の出方などについて細かに観察します。
今回の個体の特徴
(2020-11-13掲載 第79回)
波多野邦彦 2020-10-31
ナベコウ 2020-10-31(クリックで拡大・縮小)
長崎県諫早市中央干拓に今年もナベコウが飛来しました。
(2020-11-08掲載 第78回)
波多野邦彦 2020-10-19
地元津屋崎(福津市 2020-10-19 @5030-5356)でカラフトムジセッカを観察および声を録音しましたのでご報告いたします。同種は春秋に日本海側離島を中心に観察される数少ないムシクイ類です。
(MP3)
ムジセッカと比較すると、ややガッシリとした体格、大きく丸味のある頭、太く先端に丸味がある嘴、太く長い脚、最も違うのは眉斑で淡色かつ幅広く前半部分がバフ色を帯びていることです。
ムジセッカは華奢な体格、なだらかな形の頭、細く尖った嘴、細い脚、そして眉斑は淡色で後半部分が褐色味を帯びています。
両種ともに声に特徴があり、特に地鳴きはかなり違います。
参考:第63回 Phylloscopus Warblers T<モウコムジセッカ、ムジセッカ、カラフトムジセッカ>/独断と偏見の識別講座U
(2020-11-02掲載 第77回)
波多野邦彦 2020-10-09
(クリックで拡大・縮小)
秋の渡りも終盤のこの時期、サメビタキの個体数が増えてきます。
コサメビタキは早くから渡りはじめ、長い間観察できることから両種の識別ポイントを比較できるチャンスです。
余程とまりやすいのでしょう、全く同じ枝に入れ代わり立ち代わり2種がとまってくれました。
詳細につきましては、第55回 Flycatchers V <エゾビタキ、サメビタキ、コサメビタキ>(独断と偏見の識別講座U)を参照ください。
(2020-10-17掲載 第76回)
波多野邦彦 2020-03-12
(上の写真はクリックで拡大・縮小)
3. ソリハシセイタカシギ採餌 2020年3月12日 佐賀県佐賀市東与賀
昨冬シーズン佐賀県東与賀干潟に2羽のソリハシセイタカシギが越冬しました。同時に既報告済みのヨーロッパムナグロも滞在中でしたので、見に行かれた方も多いと思います。
ソリハシセイタカシギは英名PIED AVOCETといい、和名が長く言い辛いためこの英名の一部「アボセット」が愛称のように使われています。
スマートで優雅、モノクロの色彩がたいへん美しいセイタカシギの仲間です。私の鳥歴最初の探鳥で見た40数年前頃は「二十年に一度の大珍鳥」とたいへん騒がれたものでしたが、近年は九州などでは観察される機会も増えてきたようです。
最大の特徴は名前の通り、黒く細い嘴が途中から上方に反り返っています。雌の方がこの反り具合が急角度と言われていますが、皆さんご自身で確かめてみてください。また、通常は干潟上の小さな甲殻類などを餌にしていますが、脚が届かないような水深の場所でもよく泳ぎ採餌します。
あの極端に曲がった嘴で小さな生き物をどのように採餌するか右の動画でご覧ください。
(2020-10-07掲載 第75回)
波多野邦彦 2020-09-20
佐賀市・東与賀干潟には現在9月初旬からヒメハマシギ Calidris maura が観察されています。
極東ロシアやアラスカなどで繁殖し、アメリカ南部、中米、南米などで越冬する種類です。
台風9号通過後の状況が心配されましたが、再発見され21日現在継続滞在中です。
発見当初は幼羽で橙褐色の美しい肩羽が目立っていましたが、現在は灰色基調の第1回冬羽に換羽中。大きさはトウネンより僅かに大きい程度。やや長く僅かに下方へ曲がった嘴、長めの脚、純白の胸・腹等が特徴です。
※大きさ・色彩共にトウネンに近く、ハマシギとは似ていませんのでご注意ください。
東与賀干潟では10月にかけて、シギ・チドリ類の渡りピークが続きます。
(2020-09-22掲載 第74回)
波多野邦彦 2020-08-03
亜種リュウキュウアカショウビン Halcyon coromanda bongsi は、トカラ列島から南西諸島にかけて夏鳥として飛来します。
個体数も多く、一か所で数個体を同時に観察することもあります。
亜種アカショウビン H. c. major との外見上の違いは、体上面には紫色の光沢があり、また腰の水色部分も大きく鮮やかです。
画像は雄個体、オレンジの体色が特に濃い個体です。
(2020-09-11掲載 第73回)
波多野邦彦 2020-07-04
今年7月沖縄本島で亜種リュウキュウツミ♂成鳥を観察する機会を得ましたのでご報告いたします。
日本国内では、亜種ツミ Accipiter gularis gularis と亜種リュウキュウツミ A. g. iwasakii の2亜種が知られています。
分布域については前者が沖縄諸島以北、後者が南西諸島と一般的には言われていますが、未だ詳細な研究が進んでおらず正確な地域的線引きはできていないようです。
沖縄本島ではDNA鑑定による最近の研究によって亜種リュウキュウツミが生息していることがわかってきました。
(2020-08-07掲載 第72回)
波多野邦彦 2020-06-07
緊急事態宣言解除後、久しぶりに佐賀東与賀干潟(佐賀県佐賀市東与賀町)を訪れた。大潮満潮時刻09:50頃、潮高519cm。09:20頃には柵まで潮が上がり、群れが飛去した。
本日の目標は夏羽のカラフトアオアシシギ。黒味が強かったが、換羽状況からもやや若い個体だと考えられた。アオアシシギと異なる特徴のひとつである翼下面と腋羽が純白であるところは確認できた。
ミヤコドリ1羽、ダイシャクシギ25羽以上、美しい夏羽のサルハマシギ2羽なども観察。シギ・チドリ類以外にもクロツラヘラサギ35羽、ズグロカモメ25羽、クロハラアジサシ夏羽4羽などを観察した。
新型コロナウィルスの影響でこの春シーズンは残念ながら東与賀に来ることができなかった。
地元バーダーからの情報によるとヘラシギは5月上旬3,4日の短期間ながら夏羽1羽が観察されたとのこと。
(2020-06-11掲載 第71回)
波多野邦彦 2020-06-06掲載
昨年もこの種類についての記事を掲載しました。【掲載日2019.8.19】(「希少種ウチヤマセンニュウ Styan's Grasshopper Warbler」)
どちらかと言うと地味な色彩でそれほど人気のある種類ではありません。ただ、生息地域は世界的に見ると極東のごく一部、日本・中国・韓国などの離島に限られています。国内でも伊豆諸島の一部、本州、四国、九州の離島だけに夏鳥として飛来し繁殖しています。
こんな野鳥が私たちのすぐ身近にいるなんて、皆さん感動しませんか?
(2020-06-06掲載 第70回)
波多野邦彦 2020-05-27/28
波多野邦彦 2020-05-22掲載
外見が似かよっていて識別が難しいために敬遠されがちな仲間ですが、声はどれも非常に特徴的です。この春地元で録音したムシクイ5種類の囀りをご紹介します。聴き比べてみてください!
アムールムシクイ 十数年前初めて聴いた時には目前で鳴いているにもかかわらず、全く種類が判りませんでした。
エゾムシクイ 「ヒーツーチー」と高音で囀ります。外見はアムールムシクイとよく似ていて識別が難しいです。
メボソムシクイ 今回ご紹介した中で最も注意を要する種類です。3,4,5拍子等囀りにバリエーションがあります。遠距離からの録音です。よくお聴きください。
キマユムシクイ 非常に高音で細い声質です。地鳴きの「チュィッ」、囀りの「チーチュィチー」どちらも特徴的です!
センダイムシクイ 最も親しみのある囀り。今回ご紹介した中で唯一九州で繁殖するムシクイ類です。
参考:第4回 Leaf Warblers <ムシクイ類>/独断と偏見の識別講座U(波多野邦彦)
(2020-05-22掲載 第68回)
波多野邦彦 2020-03-30掲載
(写真クリックで拡大・縮小)
(2020-03-30掲載 第67回)
波多野邦彦 2019-12-29
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(2020-03-13掲載 第66回)
波多野邦彦 2020-02-25掲載
最近、筑豊支部内で佐賀東与賀干潟訪問を契機にシギ・チドリ観察機運が盛り上がってきているようです。とても良い傾向だと思います。筑豊支部だからといって、山の中に籠る必要は全くありません。春の暖かい日差しが降り注ぐ、海辺に繰り出しましょう!
と言う訳で干潟デビューする前に肩慣らし、気楽にクイズにチャレンジしてください!
まだ、少し難しいかもしれませんのでキャプションごとにヒントを付けています。
ご自分で考えてみてください。他の方々と相談しても面白いかもしれませんネ。最後のB集合写真は難問カモ??
全種類識別をお願いします。全問正解者には・・・?
解答は、3月3日、当コラムにて
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(2020-02-25掲載 第65回)
解答を見る前に、もうしばらく検討してみましょう。
波多野邦彦 2020-01-30掲載
今回は少しだけシビアな内容です。
2019年秋シーズン、筑豊支部ウェブサイト「くまたか」に複数の会員の方々からサルハマシギおよびヨーロッパトウネンについての投稿がありましたが、それらの同定は残念ながらどれも正しくありませんでした。
両種ともに個体数が少なく、観察できる機会も少ないために観察者の経験不足・知識不足や思い込みが原因となっていたようです。
サルハマシギについては独断と偏見の識別講座 第3回 Plovers and Sandpipers<小型シギ・チドリ類> 及び探鳥トラバース第45回 シギ・チドリ秋の渡りがピークです! で、ヨーロッパトウネンについては同識別講座 第60回 Waders V でトウネンとの識別について述べていますので参考になさってください。
今回の探鳥トラバースでは、シギ・チドリ類識別の正確なアプローチ方法や考え方を少しでも深めていただければ幸いです。
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キャプション(27)〜(37)サルハマシギ ⇒ 全てハマシギ
<キャプション未修正>
<添付画像参照:周囲のハマシギと比較 筆者撮影>
※追加修正(17)(18)アマサギ ⇒ チュウサギ野外識別(Field Identification)
以前、他支部会員の方から、シギ・チドリについて図鑑で猛勉強し準備万端整えた上で干潟デビューしたにもかかわらず、実際にスコープを通して観察してみると目の前にいる種類でさえ、全く理解できず、冷や汗をかいたという経験談をお聞きしたことがあります。たいへん正直な方だと思いますが、皆さんはいかがでしょうか?個体差
同じ種類の中でも雌雄、年齢の違い、換羽状況等によって様々な色彩の個体がいます。からだの大きさや嘴の長さなども様々です。重要なのはどこまでが同一種類の個体差の範囲内でどこからが別の種類になるのかを見極めることです。シギ・チドリ探鳥会
探鳥会開催日をいつにすればいいか?探鳥会リーダーの方にとって頭の痛い問題でしょう?ただ、シギ・チドリ類観察に限って言えば、現在全国各地の干潟の干満時刻や潮高を数か月〜数年先までネット上にある潮見表で正確に調べることが可能です。識別にチャレンジ
添付した画像(No.3116、No.3117)は2019年10月27日、佐賀県東与賀干潟で撮影したものです。どちらも特徴のある嘴は見えませんが十分識別可能です。ぜひチャレンジしてみてください!!最後に
今回、敢えて支部ウェブサイト「くまたか」に掲載された画像についてキャプション毎に解説しました。どれもシギ・チドリ類の識別において正確なアプローチを行うことが目的です。(2020-01-30掲載 第64回)
波多野邦彦 2020-01-22掲載
問題:(クリックで拡大・縮小)
今シーズンは本格的な寒波がまだ来ておらず、暖かい冬になっています。それでもカモ類は順調に増え続け、年が明けかなり安定してきました。ガンカモ調査も始まっているので、目を慣れさせるための軽い準備運動です。ぜひチャレンジしてください!では...
※サイト注:事情により掲載が遅れまして、著者・波多野邦彦様にお詫びいたします。
こども工作教室よりキッチンタイマーを使用しました。(感謝)
(2020-01-22掲載 第63回)
波多野邦彦 2019-12-15
小学校低学年の頃に知り合ったS木君とA村君、二人とも立派な青年バーダーに成長しました!彼らとの前々からの約束で今日は長崎県諫早干拓を探鳥。
筑豊支部の皆様お気づきでしょうか?右側の彼は過去2回お父さんと一緒に筑豊支部英彦山探鳥会に参加し、クマタカを見つけたあの少年です!左の彼はA村君とは同級生。同様に福岡支部に在籍し、現在大学・生研で1年生ながらもリーダー格で活躍中!!二人とも将来を嘱望される素晴らしいバーダーです!!よろしくお願いします。
天候晴れ、気温5℃。北東の暴風がほぼ一日吹き荒れました。晴れてはいるものの冷たい強風が吹きつけます。海上は波高く、潜水ガモやカモメ類はほとんど見られませんでした。また、葦原内の小鳥類観察も同様にかなり厳しい状況でした。
ナベコウはタイミング合わないのか確認できず。
とは言うもののいつもそれなりに楽しめるのが、諫早の魅力です!!
(2019-12-23掲載 第62回)
波多野邦彦 2019-11-30掲載
(2019-11-30掲載 第61回)
波多野邦彦 2019-09-26
今シーズン第3弾!最終回は「シギ・チドリ類の観察のポイントについて」
シギ・チドリ類観察で最も重要なポイントは、「大潮・中潮の潮高の高い日で、潮が満ち始めてから満潮までの時間帯に観察すること」です。
以下に説明します。
(参考)潮汐・潮見表カレンダー(参考:佐賀・住之江)
(2019-09-26掲載 第60回)
波多野邦彦 2019-09-18
前回の探鳥トラバース号外でシギ・チドリ類の観察方法を詳細にお知らせした、<8月中旬から9月いっぱいまでの今の時期は「秋のシギ・チドリの渡りシーズン真っ只中」であることをお忘れなく!!次に潮が良いのは9月13日(金)から19日(木)頃まで、この辺りが今シーズン最大の見どころではないかと思います。>
この週末三連休の間、全国から数多くのバードウォッチャーが佐賀県・東与賀干潟に集まってきました。ここは日本一の干潟です。まだあと3日間は潮の具合が良いのでイケそうですが、筑豊支部の皆さまは現地を訪問されたでしょうか? シギ・チドリ類の経験が浅い方でも現地に居る詳しいウォッチャーに礼儀正しく丁寧に質問しながら一生懸命観察されています。
今週木曜日辺りまでがこの秋最後のチャンスです。くれぐれも観察時間(満潮前の2〜3時間から・もっと早くても良い)をお間違えの無いようにお願いいたします。また、シギ・チドリの観察にはスコープは必需品です。注意事項としては、通常海岸沿いが多いため日影がありません。帽子、長袖シャツ、長靴、日焼け止め、スポーツドリンク等、熱中症対策だけは厳重にお願いいたします。
(2019-09-18掲載 第59回)
波多野邦彦 2019-09-08
猛烈に暑かった夏も終わり、9月中旬から始まるアカハラダカやハチクマの渡りを楽しみにお待ちになっている皆さまも多いことと思います。支部のウェブサイトも最近は野鳥の話題が静かです。
ただ、8月中旬から9月いっぱいまでの今の時期は「秋のシギ・チドリの渡りシーズン真っ只中」であることをお忘れなく!!次に潮が良いのは9月13日(金)から19日(木)頃まで、この辺りが今シーズン最大の見どころではないかと思います。
シギ・チドリの観察方法は、各地の大潮・満潮時刻の2〜3時間くらい前から開始します。そして、狙い目のシギ・チドリに的を絞り、潮が満ちて来るに従って近づいて来るところを集中的に観察する。こういった方法を採ります。
この探鳥で最も大切なのが、満潮時刻と潮高です。勘違いをして干潮時刻に行くと遠浅の干潟のはるか彼方、芥子粒のような鳥影を眺めるだけになってしまいます。また、小潮や長潮の時は潮高が足らず、鳥が近くまで寄って来ない場合があります。潮が満ちて来る時と引いて行く時では干潟に居る鳥の状態が違いますので、満潮時前、満ちてくる時に観察する方がベターです。
この秋はぜひ、お仲間を誘ってシギ・チドリの観察にお出かけください。シギ・チドリの観察にはスコープは必需品です。注意事項としては、通常海岸沿いが多いため日影がありません。帽子、長袖シャツ、長靴、日焼け止め、スポーツドリンク等、熱中症対策だけは厳重にお願いいたします。
(2019-09-08掲載 第58回)
英彦山三昧<ヒコザンマイ>Ⅴ
波多野邦彦 2019-07-06/07
19:51ポイントでオオコノハズクが頭上5mの枝に突然飛来し約1分間とまる。餌を食べた直後か、口をモゴモゴさせていた。その後、背後の林に飛去し、「ワッハッハ」鳴きを一回。英彦山で夏期繁殖個体の姿を確認できたのはこれが初めて。感動だった!
翌早朝、別の場所で03:59オオコノハズクの「キューリー」鳴きを4回確認した。同所では6月9日に「木魚鳴き」も確認している。この夏、英彦山のオオコノハズクにかなり肉迫することができた。残る目標は、営巣木、育雛、ヒナの確認等。
参考資料: 2018-05-26 オオコノハズク「ワッハッハ」@英彦山 (渋田朗氏録音編集)
アオバズクは複数箇所でよく鳴いていた。
以前から観察中のクマタカは昨年ヒナが巣立って以来、この春ごろから出現時間や出現場所が以前と変わってきている。今日はサシバがしつこくモビングを仕掛けてくれたおかげで、しばらくの間クマタカの飛翔を観察することができた。サシバと大きさを比較してください。雄成鳥なのでクマタカとしては小さい方ですがその大きさがおわかりになると思います。(動画を[開|閉]内部に収録)
夜間探鳥は非常に面白く、意外な成果を期待できるが、安全面でリスクを伴うので、十分な準備と装備が必要。
(2019-08-30掲載 第57回)
波多野邦彦 2019-07-14
福岡市志賀島先端にある沖津島はウチヤマセンニュウ繁殖地として知られている。中潮干潮13:59、潮高29cm。条件は良くない。短時間観察を覚悟の上、5名で渡島。
ウチヤマセンニュウは日本、朝鮮半島、中国の一部の離島にだけ生息する世界的希少種。国内では三宅島など伊豆諸島の一部、本州、四国、九州の小島に夏鳥として飛来し局地的に生息する。福岡県では他に宗像市沖ノ島が知られており、島の周囲で多くの個体が繁殖している。
「チュリリrrrrrr、ジュウィ、ジュウィ、ジュウィ」という大きな音量の独特な囀り。
外見はシマセンニュウに似るがやや大きく嘴や脚が太く長くガッシリとした印象。目つきがよりきつく感じる。囀りはシマセンニュウに比べるとやや太い声質でのんびりしたリズム。
過去にはシマセンニュウの亜種ウチヤマシマセンニュウと呼ばれていた。現在は独立種。ここで見るウチヤマは三宅島のものに比べて大きく感じるが、単に至近距離のせいだろうか?
それにしても鳥の居場所の説明がこれほど下手だったとは!当日は反省しきりでした!
※干潮時刻、潮高、潮流、天候、風向・風速、装備、観察時間等全て考慮の上、対応が必要です。
(2019-08-19掲載 第56回)
英彦山三昧<ヒコザンマイ>Ⅳ
波多野邦彦
2019-06-08/09
当日雨降りからの回復が遅れ、天候の状態を見極めながらぎりぎりまで実施・中止を検討しながらの対応だった。結果的に2日間ともに探鳥実施中はくもり・無風(微風)で声を聴く夜間探鳥には絶好のコンディションだった。ヤマガラの会3名の皆さんとチーム編成。各人の探鳥に対する集中力・取組姿勢がとても素晴らしかった。
今回の目標は、コノハズクとオオコノハズクの生声を聴くこと。これまで、個人的にも一晩で両種の声を聴いたことが無かった。別々の場所でそれぞれかなり近距離、クリアな生声を聴くことができた。
コノハズクは英彦山経験上最も近かった。こちらの気配が伝わったのか、5フレーズ繰り返し鳴いただけでその後鳴き止む。オオコノハズクは「ウォッ、ウォッ、ウォッ、・・・」と続けて鳴くいわゆる「木魚鳴き」。約5分間、断続的に4回程度繰り返した。
夜間探鳥は非常に面白く、意外な成果を期待できるが、安全面でリスクを伴うので、十分な準備と装備が必要。
参考資料は2017-06、今回と同じ場所で録音したコノハズク声。
参考資料:コノハズク 2017-06(筆者録音 mp3)
(2019-07-30掲載 第55回)
波多野邦彦 2019-07-08,09
私が住んでいる地域は住宅地ですが、周辺に広大な里山環境が残っており、多くの野鳥が観察されます。今シーズン、幸運にもコチドリの繁殖を観察したのでご報告です。(写真はいずれもクリックで拡大・縮小)
街中の荒地で野鳥が繁殖し、ヒナを育て、無事に巣立って行った。この一連の生命のドラマに気づくことができたのは多分自分一人だけです。他の誰かが立ち止まって観ている場面には一度も遭遇しませんでした。野鳥を趣味にしたおかげで、変化の少ない日常の中で小さな感動を味わうことができました。
(2019-07-25掲載 第54回)
波多野邦彦 2019-05-11/12
渡り鳥を追って離島に通い続けていると、たまに野鳥が渡っていることを実感できる現象に遭遇することがある。
今回は小呂島(おろのしま、福岡市西区)第2弾。
(参照:渡りを肌で実感する探鳥!福岡市西区・小呂島)5月中旬は春の渡り後半。個体数や種類数は望めないものの、珍鳥出現の可能性が高まる。但し、珍鳥が出なければ他種類は非常に少ないギャンブル的な要素が強いシーズンなので要注意。
小呂島に渡りの小鳥を狙って渡島した。海上凪。日差しは強いが空気がひんやりとしている。
キバラムシクイはこの時期の目標種のひとつとしてリストアップしていた。「チュン、チュン」とかなり大きな声。頭の形も僅かに丸味があり、同種の特徴を示していた。顔横1m弱、極至近距離、ブッシュの中にチラリと見えた瞬間、前方の繁みに飛び込まれた。以降、出て来ず、声もしなくなった。最終的な同定にあと僅か一歩届かず!
ムシクイ類はセンダイムシクイ最多、次にエゾムシクイ、最後にメボソムシクイ。キマユムシクイ1、昨春のヒメイソヒヨ?、今回のキバラムシクイ?未だ完全な同定に至っていないが、夢を抱かせてくれる!
ヨタカ個体数多く、5個体を観察、声を録音した(下記再生コントロール)。鳴き交わし、2羽で追いかける、ヒラヒラと舞うような採餌飛翔など様々な行動を確認した。
ヨタカ (2019-05-12 小呂島 MP3)
5月25日渡島時に咲いていたクロバナイヨカズラ(キョウチクトウ科)。福岡県内ではここだけの希少種(品種)らしい。5月下旬から6月上旬が開花時期。野鳥の春の渡り時期終了以降なので注意。
小呂島に観光客が宿泊できる宿は無い。定期船(写真)は曜日で時間が変わるので注意。あくまでも島民の生活のための定期船です。多人数での利用はご遠慮ください。また欠航も多いので海上気象にも注意が必要。
(2019-06-30掲載 第53回)
波多野邦彦 2019-06-17
※画像は観察サイト中のものをトリミングしています。(引用元:マガモ、アヒル)
マガモは通常首に近い背の部分(黄色矢印)が高い位置にあり尾(後方)に向かってなだらかに下がっていきます。尾の下側下尾筒の部分は小さく水面上に僅かに見える程度です。これに対しアヒルは体前部が水中に沈みこみ首に近い背の部分は下がり、マガモの場合とは逆に尾が高く上がってお尻の部分が大きく水面上に突き出て見えます。(赤色矢印)
雄の白い首輪はくっきりとしたリング状(画像ではやや判りづらい)なのに対しアヒルでは不明瞭なものが多く、無いものも多数います。雌の場合、マガモは明るい黄褐色の地に褐色の明瞭なうろこ模様がありますが、アヒルではぼんやりとした不明瞭な色彩のものが多いようです。(ピンク色矢印)また、全般的に頭、嘴やからだの色彩もアヒルはマガモに比べて変異が多く鈍い色をしています(紫色矢印)。
稲作の方法でアイガモ農法というのがありますね。アイガモを水田に放し飼いにして雑草などを駆除する方法です。このアイガモは野生種のマガモと家禽のアヒルを掛け合わせたもので、飛べませんが、一見してマガモとの区別が難しいケースもあるようです。
(2019-06-17掲載 第52回)
波多野邦彦 2019-05-19
本日の目標は夏羽のヘラシギ1種だけなので、いつものシギ・チドリ単独自主目標設定は無し。探鳥時間を全てヘラシギ探索と観察に費やした。5月6日は2羽観察したが今日は換羽が進んだ1羽のみ。
ヘラシギは2000年代に入って減少が急加速し、2010年代には推定繁殖つがい数は、35〜140つがいほどに激減したと言われています。近年、東与賀干拓(佐賀県)の記録も断続的で、昨年秋は2年ぶり、この春は3年ぶりの出現だった模様です。
秋の幼鳥は頭頂と背が黒っぽく、パンダ顔も見えるので見つけやすいが、春の夏羽は周囲にいるトウネン夏羽との差異が僅かなため探し出すのに苦労しました。今日観察に来ているバーダー全員で探します。
頭、顔、頸にかけてすっぽりと頭巾を被ったように赤黒く、暗色小斑が下胸、左右の脇腹まで広がっている。嘴基部に僅かに淡色部分がある。背のV字線は黄色で明瞭。大きさはトウネンよりもやや大きく感じる。嘴を干潟の表面から離さずに常時素早く小刻みに頭を前後させる採餌特徴はトウネンとの差別化に有効。ほとんど休まずにせわしなく動き回る。
探鳥トラバース前号・号外でもお知らせしたとおり、シギ・チドリ探鳥は観察に行くタイミングが重要。5月23日現在、主力の群れはほぼ渡去してしまった。ヘラシギも既にいなくなったと思われる。
今回は「ヘラシギ成鳥夏羽!」です。前回・号外に続き、シギ・チドリ類についての話題。
佐賀・東与賀干潟は現在日本一のシギ・チドリ類観察場所として全国からバーダーが集まって来ています。
地元九州にこんな素晴らしい干潟があるのに筑豊支部の皆さんがほとんど見に行かないのは本当にもったいないと思います。
シギ・チドリ類の識別に自信が無くても、現場には若くて優秀なバーダーが大勢います。事前の勉強は勿論必要ですが、初めての方や経験の浅い方にも親切に説明してくれます。
たまには仲間内だけの集まりから少し離れて、ご自分の見識を広めるのも良い経験になると思います。
春の渡りシーズンは既に終わりました。次は秋のシギ・チドリシーズンです。秋と言っても8月中旬過ぎ頃から始まりますのでご注意!
(2019-05-30掲載 第51回)
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