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日常やフィールドで出会ったいい話、困ったこと、奇妙な体験、ちょっと真面目な話など、みなさんの“野鳥風景”を掲載します。
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シギ・チドリへ思う

古城英彦 2010-03-26掲載
(日本野鳥の会筑豊支部会員)

私は知る人ぞ知る、シギ・チドリ大好き人間です。

そのシギ・チドリが春の渡りの本番を迎えようとしています。しかし、シギ・チドリと云うと、似たような姿かたちをしていて、尚且つ、地味な色合い(冬羽や幼鳥羽)なので、識別が難しいとされ、一般のバードウォッチャーには人気がありません。某野鳥雑誌の3月号の特集の中で、〈識別が難しい種類は〉の項目で、シギ・チドリ類がダントツで1位でした(以下、2位猛禽類、3位カモメ類、4位カモ類・ムシクイ類、6位ヒタキ類、7位海鳥類・・・)。私に言わせると、飛翔時の猛禽類、それにムシクイ類やヒタキ類のメスも結構難しいと思うのですが、こう云う結果になったのは、ひとえに関心度の違いのように思えます。

猛禽類は格好がよく、狩りに醍醐味があります。野山の小鳥類は姿や行動が可愛らしく、色も綺麗な鳥が多いです。それに比べ、シギ・チドリ類は前述しているように、色が地味(特に冬羽)で、似たような姿かたちをした種類が多い。だから、『シギ・チドリはチョット』と云う人が多いように思えます。でも、決して難しくはありませんよ。要は、各々の種類の見分けるポイント、行動、習性、及び生息環境さえ、しっかり把握しておけば、まったく難しくはありません。(コチドリ、イカルチドリ、シロチドリ、メダイチドリ)(ムナグロ、ダイゼン)(トウネン、ヒバリシギ、ウズラシギ)(ハマシギ、サルハマシギ)(コオバシギ、オバシギ)(ツルシギ、アカアシシギ)(クサシギ、タカブシギ、イソシギ、キアシシギ)(オグロシギ、オオソリハシシギ)(ダイシャクシギ、ホウロクシギ、チュウシャクシギ)以上、見分けにくいと思われる種類を( )で纏めました。貴方も識別にtryしてみてください。

では、前置きが長くなりましたが、本題はここからです。この識別が難しいとされ、バードウォッチャーからも敬遠されているシギ・チドリ類ですが、近年著しく減少している鳥たちです。原因は、繁殖地の人為的影響、渡りの途中や越冬地の生息環境(干潟や水田などの湿地)の消滅です。〔※主な原因は開発(埋め立て、農地の荒廃など)〕。

現に私が一番大切にしている干拓地でも、この4、5年ぐらい前から、かなり少なくなってきました。5、6年前ぐらいまでは、常にトウネンやタシギが30羽ぐらい、タカブシギが20羽ぐらい渡来していましたが、近年はトウネン、タシギは数羽〜20羽程度、タカブシギに関しては一桁が多くなりました。また、エリマキシギも毎年2、3羽来ていましたが、近年は稀になりました。それと過去には、比較的渡来数の少ない種類のヒバリシギが50羽、オグロシギが11羽、セイタカシギが7羽、ツバメチドリが7羽などと云う記録もありました。他には、珍鳥の分類に入るオジロトウネン、サルハマシギ、キリアイ、アカアシシギ、コシャクシギなども時々は顔を見せてくれていました。『本当に昔は良かった』と云う感じになってきました。

勿論、この場所でシギ・チドリ類が著しく減少している原因は、温暖化などの地球環境の変化などの要素も当然あるでしょうが、やっぱり一番の原因は、前述したように繁殖地や渡りの途中の開発による生息地の消滅や、この場所のように農地の荒廃などの人為的な生息地の消滅が大きいと思われます。本当にこれ以上、彼らの生息環境が奪われないように願うばかりで、少しでも長く、多くのシギ・チドリを観ていけたらと思っています。

(日本野鳥の会筑豊・会報「野鳥だより・筑豊」2010年4月号・通巻第386号より転載)

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