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日常やフィールドで出会ったいい話、困ったこと、奇妙な体験、ちょっと真面目な話など、みなさんの“野鳥風景”を掲載します。
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双眼鏡で野鳥を見る法

有働孝士 2020-06-24掲載

表題を見て、何を今さらと思う方もおられるでしょう。案外見過ごされがちなことだと思うのですが、実は双眼鏡ビギナーにとって最初のハードルが、目前の野鳥を双眼鏡に捉えるときの困難。ほとんどはここぞと思う場所を見ることさえできません。しまいにはどこを見ているのかも分からなくなります。結局、探鳥会では、スコープに入れてもらった野鳥を覗くだけで、ただ首の重りと化した双眼鏡を実地に役立てることもできません。

見られればそれでもいいじゃないかというのは早計。自分の双眼鏡で視野に入れ、野鳥と対峙して初めて観察の実感と喜びが手に入ります。実にこうした感動の大部分は自らの手で見たことへの達成感が占めています。というわけで、拙論は、双眼鏡ビギナーへの提案案件です。

ここでもうひとつの課題は、指導者がこの困った状況の解決法を伝授できないこともあるかと思います。慣れれば使えるようになるよ、といったその場しのぎでなく、分かりやすいテクニックとして伝授できなければ、上から目線で口幅ったいことながら指導者としての立場が危うくなります。

そこで、その方法です。水辺でも山中でもよいのですが、ここでは山中の一本の木を想定します。木のてっぺん付近に目的の野鳥が止まっています。この野鳥を双眼鏡の視野に捉える手順です。

  1. まず、体を目的の野鳥(のいる木)に向けて立ちます。
  2. 次にその野鳥と自分を結ぶ一本のまっすぐで強固な直線を仮想(仮定)します。
  3. 改めて、その線と“直角になるように”(ここ重要)に体の向きを構えます。
    このとき、両足は開き気味にして確かな足場を作り、体が揺れたり向きが変わらないよう安定させることが大切です。あたかも1枚の板になったつもりでしっかりと立ち、遠くの野鳥と相対します。先ほどの仮想の直線はまっすぐ野鳥と自分を繋いでいますか?
  4. その状態を保ったまま、双眼鏡を下向けにして、まず10mくらい先を視野にいれます。ピントを調整しながら、そのまま仮想の線に沿って“すくい上げる”ように双眼鏡を動かし、目的の木のあたりまで視野に入れたらあと一息。野鳥はこの線上のどこかに必ずいますから、ゆっくり探します。

実はこの姿勢、3点支持で双眼鏡が保持されるので、上下動は直線として保証されます。よって、双眼鏡を左右に動かさないようにしましょう。仮想の線から外れ、目的の場所を見失ないます。自分の身体を基準にして、対象の野鳥と対面(直角)に向き合うことが、基本です(直角対面を略して直対法といま命名)。こうすることで、他の余分な要素を一切排除し、きわめて複雑な状況を、野鳥を含むたった一本の線分に単純化できるのです。

双眼鏡の狭い視野の中では仮想の線を想定しづらいと思いますが、体の向きさえ不動なら、双眼鏡の視野は常に野鳥を通る線上にありますから、もう線は意識しなくても大丈夫。双眼鏡をすくい上げるとき同時にピントの調整が難しいかもしれませんので、あらかじめ若干遠くにピント合わせておけば、見つけやすくなるでしょう。野鳥を見つけてから、改めてピントを正確にあわせれば良いのです。もし仮想線上に野鳥が見つからないときは、すでに飛び去ったか、あるいは見落としているかです。経験的には見落としている場合が多いようです。

永遠のビギナーである筆者もいまだにこの方法を使うことがあります。少し複雑な遠景に野鳥がいるような場合はとりわけ有効な方法です。干潟などではどこも似たような風景が広がっており、目的の点のようなシギ類などを視野に入れる場合や青空のように目印のない空間でタカ類を見るときなども役立ちます。また直対法はスコープでも使えますし、超望遠コンデジでも応用可能です。

双眼鏡を扱い慣れた経験者は、実は無意識に直対法のうち仮想線を除いた部分を実践しているように思います。という訳でほとんど瞬時に双眼鏡で野鳥を捉えるベテランには無用の技法でしょうが、大切なことは、ビギナーに方法として言葉で表し、伝授できるという一点に尽きます。必要なときには、どうぞお役立てください。

ビギナーついでに追伸。双眼鏡初体験の方に、これだけは注意していただきたいことです。それは、決して太陽を見ないこと。いつも太陽の位置を頭に入れておき、絶対視野に入れないよう気を付けます。ウッカリしていると両目に重大な損傷を与えます。指導者の方で特に小学生などを対象とするときは、このひとことを添えるようおすすめします。また、双眼鏡は極力首から下げておきましょう。手に持ったり肩に下げていると、つい固いものにぶつけ故障(光軸の狂い)の原因になり、修理に余分な出費がかさみます。

(「野鳥だより・筑豊」2020年7月号より転載)

(2020-06-24掲載)

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