クマタカ
くまたか (日本野鳥の会筑豊支部)
 ホーム風切羽背面飛行
online 
total 
modify:2022-08-08

 背面飛行

日常やフィールドで出会ったいい話、困ったこと、奇妙な体験、ちょっと真面目な話など、みなさんの“野鳥風景”を掲載します。
話題や原稿をお寄せください。絶対実名主義の「くまたか」ながら、このページだけペンネームOK。鳥に関する由無し事をちょっと記してみましょう。話題は締め切りなし、常時募集中

足輪付きコウノトリは野鳥にあらず

有働孝士 2022-01-26掲載

遠路はるばる、よくぞ辺境の筑豊まで来てくれたと胸熱の初対面は2017年直方市・鴨生田池でのことでした。その際の様子は「コウノトリは野鳥だろうか?」に記しました。その時、表題にあるような疑問にとらわれています。拙稿は、一部繰り返しとなりますが、放鳥を野鳥として記録すべきではないという趣旨です。やむを得ず上から目線でたいへん恐縮ながら、野鳥として記録するのは間違いですので、鳥信記ほかの記載記録を改めるとともに、今後に向け、本会でも注意を喚起していただきたい事案です。

長々しい拙文を読むのは面倒という方に、要約を記しています。

  1. 足輪付きコウノトリは放鳥なので野鳥では無いこと。
  2. 野鳥観察リストには入れず(観察種数でも加算しない)、必要なら、欄外注記などで「放鳥」として記録されるべきこと。
  3. 足輪の無い2世以降が観察されたときは、コジュケイやガビチョウと同じ、外来種となること。

現在筑豊で観察されるコウノトリは脚に個体識別用の足輪が付けられています。これは、兵庫県を中心に香川県など7県に設けられた人工巣塔から飛び立ったことの証です。つまり、人の世話により孵化し、人に飼われて過ごしたあと、野外に放たれたのですから、紛れもなく放鳥です。たとえば、動機はまったく異なりますが、一般家庭のカゴで飼っていた鳥(外国の種)が手に余るようになったので野外に放つというのと同じです(こんな場合は遺棄といった方が適切)。私たちは、野外で観察した場合でも飼い鳥だったことが明らかなときは、観察リストに加えていません。右の事情により、足輪付きコウノトリを野鳥とすることは間違いです。しかしながら本誌や「くまたか」では、野鳥でもないのになぜか例外的な扱いになっています。

違和感が少なくなった外来種のコジュケイやカワラバトをはじめ新顔のソウシチョウ、ガビチョウも観察リストの配列順では末端に追いやられています。ところがコウノトリは、しれっと在来種リスト中(「日本鳥類目録」配列順でカワウの上あたり)に顔を出し、野鳥としてカウントされたりしています。観察リストに記録したいというなら、外来種に見られるような何らかの注記や記録方法に工夫が必要ではないでしょうか。たとえば「放鳥」と注記のうえリスト末端に記述しますが、もちろん観察種数にはカウントしません。

そんなコウノトリも、やがて野鳥の仲間入りする日がやって来るのは間違いありません。それは足輪の無い2世代以降が観察されてからのことです。彼らはもはや放鳥された個体ではなく、親の世話で孵化し、その後野外で自活しておりレッキとした野鳥です。ところが、その立ち位置は、実はコジュケイやカワラバトと同じ階層となります。在来種の中には入れません。なぜなら人手によって親が外国から移入された飼い鳥だったので、外来種となるからです。

コウノトリは、「日本鳥類目録」第7版では、たしかに日本産鳥類として記録があり、九州ではIV(ウェブサイトによれば「稀な旅鳥・冬鳥」の意味だそうです)となっています。しかし、コジュケイやカワラバト(ドバト)と同じカテゴリー「外来種・亜種」(国内で繁殖記録のある外来種のリスト)にもコウノトリは掲載されています。もちろん、拙論で述べている足輪付きコウノトリは放鳥ですから、これらのいずれでもありません。鳥に血統主義や出自による差別を持ち込むのは良い気分ではありませんが、それはまた別の話。

一部の放鳥元団体では、巣中のヒナに足輪を付ける計画があるようなので、将来的に、放鳥、外来種の区別で個体識別が必要になったりして、かなり手間になりそうです。また、私たちにとってコウノトリは在来種、外来種、放鳥と3種類もの顔を持つことになり、ややこしさ倍増です。トキも同様のかたちで放鳥されています。トキやコウノトリ以外に、絶滅した鳥類の復活を目指して放鳥するような計画は、今後も引き続く可能性があります。観光資源や自治体、団体のイメージ・シンボルとしての価値が高まれば、各地の自治体、団体が地域おこしやイメージアップの手段として積極的に関与することでしょう。絶滅種の再生を隠れ蓑にしたこれら計画には、どこかカネの臭いがつきまといます。このような現自然の分布状態に人が介入する放鳥計画は、生態的な必要性の検証もなく、文字通り野放図ともいえ、果たして問題はないのでしょうか。

(「野鳥だより・筑豊」2022年2月号投稿に追記、転載)

(2022-01-26掲載)

Copyright (C) 日本野鳥の会筑豊支部 All Rights Reserved. (無断転載禁止、会員を含む)
本ウェブサイトに記載の会社名、システム名、ブランド名、サービス名、製品名は各社の登録商標または商標です。
本文および図表、画像中では必ずしも®、™を表記しておりません。