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提言:中間市・中島を野鳥観察パークに

有働孝士 2022-03-26掲載

1. はじめに

今年元日探鳥会は中間市下大隈・遠賀川中島(以下中島)で開催しました。観察リストに見られるように、中島が野鳥を引き寄せる凄いパワーを垣間見ました。野鳥観察パークや保護区にできないものでしょうか。中島は、開発により失われた原野風景を今も保存しており、ただ歩くだけでも清々しいフィールドです。

2. 中島の重要性

遠賀川そのものが渡りの案内路であり、中島が水域に囲まれ多様な環境を成していることも野鳥の誘致にはたいへん有利です。近隣には野鳥の珍種報告でよく知られた、響灘ビオトープ(北九州市若松区)、背板の森公園(北九州市八幡西区)、木月池(鞍手町小牧)、福津市内等があります。これらの分布はちょうど新幹線路線の北西側にあって、上記4点を結ぶと路線とほぼ平行な仮想の線が浮上します。つまり新幹線路線あたりから沿岸部までが渡り鳥の通過ベルトになっていると予想されます。
中島は、まさにこのベルト内に属し、前述の木月池(鞍手町小牧)とは直線距離で約1kmしか離れておらず、まとまりのある島という土地柄およびその面積と相まって、豊かな可能性があるのは間違いありません。環境の整備により意外な希少種や湿地に特有の種を多数誘致できるものと思われます。というか、すでに訪れているのだけれど、まだ観察されていない可能性も大いにあるはずです。すでに知られているシベリアジュリンの他に、この2月(2022年)だけでもムジセッカ(波多野邦彦氏観察記録)、アリスイ(金子忠英氏写真記録)のご報告を知り強くそう思いました。
この冬シベリアジュリンがカメラマンを集めましたが、こうした草はらの植生を好む野鳥は、各地の原野が激減したせいで、やむなく中島に集中したというのが真相でしょう。一般には原野を無駄な遊休地と認識し開発が進んでおり、野鳥にとって好ましい状況とは言えません。結果的に、数少ない原野植生のある中島はたいへん重要かつ貴重な土地となっています。

3. 中島の現況

中間市下大隈の遠賀川に浮かぶ南北約1km×東西約0.3km、面積約27.4ha(内部の水域含む)の島で人家はありません(島南端の一部は北九州市八幡西区楠橋)。現在同地は福岡県による「特定猟具(銃器)使用禁止区域」ですが、これは危険予防、静穏保持が目的であり生物や生態系保護のための指定ではありません。また、島の北端および南東部にある荒れた裸地は島全体のほぼ4分の1に相当するようで、その大部分は残土置場となっており、非常にもったいない状況です。
道路は中島の中央を直方北九州自転車道(舗装路)が南北に貫き、東および西側に舗装されない道路が並走しています。ともに観察用の道路として利用できますが、自転車道の場合は、自転車が接近しても音が聞こえず高速で横を通り過ぎるので、双方にとって危険であり安心して観察できません。できれば自転車道のルートを遠賀川西側の河川敷に変更していただきたいものです。
中島は、梶原支部長によると国土交通省の管理下にあり、一部地権者がいる可能性があるそうです(「野鳥だより・筑豊」2022年4月号3ページ「シベリアジュリン2」)。3次メッシュコードは自転車道潜水橋中島側から220mまで@5030-5576、以降陸部は南端まで@5030-5566。

4. 鳥獣保護区への展望

中島は鳥獣保護区やビオトープ、自然公園のような保護区・施設の設定・設置には最適な土地となります。遠賀川増水時にどこまで冠水するかも注意すべき重要なポイントです。こうした点を考慮し、水辺にヨシ・ガマ・マコモの繁茂などを目的にした湿地の拡充・育成や、北東部の森をさらに南(現残土置場)に延伸してはいかがでしょうか。植樹の際、ぜひ地域周辺の自然の林相と同じにしましょう。あくまで自然観察施設であり、一般的な公園ではないので、外来樹種・草花の植栽はもちろん芝張り、ソメイヨシノ、遊具設置等は避けるべきです。現地の原生在来自然を尊重し復元すれば、自然環境は豊富かつ多様に変わることでしょう。
中島を野鳥の楽園に変え、またこれを観察するためにハイド(人の姿が見えないように作られた野鳥観察のための衝立や小屋。目立たない小窓により野鳥を脅かすことなく間近から観察できる)など控えめな施設を設置し、自然観察を目的に絞った観光資源としての利用を目指します。野鳥の誘致では、多様な自然環境、渡りのルート上にあること、周辺環境の静穏と安定等が必須条件です。中島は多少の環境改善でこれらの条件を満たし、北九州市および周辺のベッドタウンに近く、筑豊からのアクセスも容易なことから、多くのビジターを望むことが可能です。また近隣の学校にとっては、格好の自然観察教育の場としてたいへん有用です。
駐車場、観察施設の整備などわずかな投資で、地元中間市にとりイメージ的、経済的リターンは大きなものとなります。同島の関連行政機関である国および福岡県や中間市におかれては、ご検討いただきぜひ実現をお願いしたいと思います。

5. 持続可能な活動への提案

僭越ながら本会への提案です。中島の通年調査を企画されてはいかがでしょうか?毎月1回程度、ラインセンサスや定点観察調査およびできれば数回の植物調査も行えば、多方面から中島の詳細な実相が判明することでしょう。偶然のみに頼るのでなく、組織的調査で「2. 中島の重要性」で述べた理由により多くの珍種が輩出する可能性もあります。さらにその結果は鳥獣保護区の設定を支援する有用な資料となるはずです。
現地中島は歩きやすく、ラインセンサスなどの調査実習には格好のフィールドです。目的を明確に定めて、会員から参加を募り、識別実習をかねた調査法学習の場にすれば、後継の育成につながります。最近の傾向で、現地での撮影画像を持ち帰って識別する方法が見られますが、これでは動作や声などの大切な情報が抜け落ちます。もちろん写真画像も重要な手がかりですが、識別は、現地での観察、特に地鳴きなど声にも傾注し、時季、環境等を総合的にまとめてこそ正しいあり方となります。実地調査の手法は、初心者にとり識別スキルを習得するよい機会となるはずです。残念ながら、本会ではフィールドにおける会員への識別手法の学習プログラムがありません。将来を見据えた持続可能な活動の一環として、本会でのご検討を提案したいと思います。

(2022-03-26掲載、「野鳥だより・筑豊」2022年4月号より一部加筆転載)

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