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寿限無ジュゲムな野鳥たち2

有働孝士 2022-06-14掲載

標準和名(以下和名)は、私たちバードウォッチャーにとって日常的で重要なソフトウェア・ツールです。以下、和名は長いほど冗長、すなわちムダが多く使い勝手も悪くなるという観点から、和名の冗長さを表す単位を考えました。対象にしたのは日本鳥学会発行の「日本鳥類目録」改訂第7版です。この日本鳥類目録で最冗長を誇るシロハラアカアシミズナギドリの文字数14で割れば、その冗長の程度を数値で客観的に表わせるはずという目論見です。
調べてみると、和名の文字長平均は約6.22文字。これにはオオヨシキリやシジュウカラなどよく耳にする仲間が該当します。早速試算してみると6.22÷14=0.44。数値に単位は付き物ですから、拙論ではこの単位を落語「寿限無」から頂戴してJu(ジュゲム)としましょう。和名の冗長度を表す単位の誕生です。最大値はかのシロハラアカアシミズナギドリで1Ju(ジュゲム)。最小値は2文字のキジやウソで0.14Ju(ジュゲム)。このように、数値が小さいほど和名がコンパクトになりツールとして優れているという判断です。
ジュゲム値が高い、つまり文字長が長過ぎて冗長な和名の種は一体どのくらいいるのか。高い・低いは主観ですから、いっそ主観的に決めさせていただくことにしましょう。ぎりぎり我慢できるのはカンムリツクシガモなど0.64Ju(9文字)まで(異論容認)が目安。ズグロチャキンチョウから上の0.71Ju(10文字)以上は、冗長感がかなり強く、軽やかに空を舞うミズナギドリ類やアジサシ類に0.92Juもある自分の和名を聞かせてやったら、失望と脱力でよろよろと落下しないか心配です。
日本鳥類目録において10文字以上の和名が占める割合を調べると約7.7%。ところが、前号の拙稿「寿限無ジュゲムな野鳥たち」で眺めたIOCリスト*の方は、最長17文字から10文字までを4153種が占め、41%にもなることが分かりました。なぜか命名者は、長い名前を好む傾向が顕著です。ちなみに最長の名前フェルナンデスベニイタダキハチドリはびっくりの1.21Ju。ともあれ、名前がIOCリストから日本鳥類目録に和名として採用されていない間は、提案の状態にあると思われ、まだ“更生”の機会はあります。いやはや17文字はいくら何でも長過ぎる。そもそも、命名者には“長すぎる”という自覚はあるのでしょうか。
*IOC World Bird List  Multiling IOC 11.2_c.xlsx
これから国内発見の新種に和名をつける方にお願いしたいこと。ぜひ短い和名にこだわっていただきたい。和名に、識別図鑑を不要にするような多数の特徴列挙や生息地、栄誉がらみの固有名詞(国名・地名・人名)、多重の隠喩など収めたりしていたら、ジュゲム値は増える一方です。また、たとえばカワリシロハラミズナギドリのように、和名末に長い属名(シロハラミズナギドリ)やその一部を含めるのも長名の一要因になっています。和名末尾の〜チョウや〜ドリも分かりきっているわけで要らないとといえば要らない部分です。なるべく9文字(0.64Ju)以下を目標に、セッカやキクイタダキ、さらにはウスベニタヒバリのように、エレガントであっさりした和名を望みたいものです。
余談です。書かれた和名と発声では、数え方(単位)に違いがあります。文字数は書かれた文字の数ですが、発声の音数は、日本語では「拍」(はく)という単位で数えます。原則1字1拍ですが、“ァィゥェォャュョ”の各字(拗音)は、前の文字と一つになって1拍を成します。たとえばチュウシャクシギは、文字数は8文字ですが、発声のときは6拍となります。拙稿のジュゲム値Juは表記文字数を元にした数値です。
文末で恐縮ながら、筑豊支部の会員で国内記録の種に標準和名の名付け親がおられることが分かり、驚いてしまいました。和名は例にあげたウスベニタヒバリ。波多野邦彦、渋田朗、岡部海都の各氏です(ほかに会員外で池長裕史氏)。「日本鳥学会誌」に発表され、オリジナルの論文「福岡県福津市における Rosy Pipit Anthus roseatus の国内初記録」はリンク先で読めますので、ぜひご一読ください。

(2022-06-14掲載、「野鳥だより・筑豊」2022年6月号より一部加筆転載)

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