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有働孝士 2022-12-06掲載
野鳥を見る時、まず双眼鏡で見るか、またはファインダー(カメラ)を覗くかというささやかな違いは、後に決定的な結果になるような気がするという、以下与太話にお付き合いください。さて、だいぶ前から、本会を去って行かれた数人の会員の方々のことが私には謎でした。さもありなんという退会理由でしたので、初めのうちはそれほど気にならなかったのです。でも、なぜか頭の隅に疑問符付きでわだかまっていて、何かを見落としているような気分が抜けませんでした。そのせいか、興味深い共通点が二点あることに気が付きました。
その一、はじめ気になったのは、なぜかカメラ有能な方ばかりが辞めていかれるなあという漠然とした印象でした。どなたも素晴らしい写真を撮影され、「くまたか」に投稿されていました。また、野鳥の写真ばかりでなく、探鳥会・観察会の様子もつぶさに撮影され、こうした情景はその場限りなので、本会や後世の会員にとっても貴重なシーン、資料となり、非常に価値あるものとなりました。いろいろ経緯はあったにせよ、これには今も感謝しています。
その二、さらに気づいたこと。撮影は凄いれけどあまり識別には関心をもっておられない様子が窺われたことです。現場で声などの特徴についてお話を持ちかけても、スルーされることが多く(私個人が疎まれていた可能性大ですが)、また、撮影した野鳥の画像を自宅に持ち帰って識別を試みる方が多い印象がありました。詳細に検証可能な写真は素晴らしい反面、声や動作、周辺の環境などの様子は写真には写らないため、これ無しでの識別はむしろ困難になることもあり、写真だけの識別はおすすめしません。などと、未だに言っておりますが。
さて、共通点があるということは、もしかして辞める原因も実は共通していたのではないかという疑問が芽生えました。そんなとき、広塚事務局長が参加されたは(公財)日本野鳥の会「令和3年度連携団体全国総会」の報告にあった興味深い報告が端緒になって、答への筋道が見えたように思いました。その報告は次のような内容です。
“埼玉県支部からの報告:アオバズク営巣の撮影状況を25日間観察結果500名を集計した。比率は会員6名/一般110名で圧倒的に一般カメラマンが多かった。”(広塚忠夫事務局長)
近年問題化しているカメラマンのマナー違反、迷惑行為の報告の一節です。上記報告では、野鳥の会の会員は実にたったの5.4%に過ぎません。これを読んだ時、残りの95%弱の方々、野鳥が好きなら野鳥の会に入会すればいいのに、ととても不思議に思いました。そして、なぜ入会しないのかという疑問の解答は、かつて聞いた話“野鳥の会はマナーだ識別だとうっとうしい”にありました。ご本人はただ野鳥を撮影したいばかりなのに、マナーをタテに撮影の仕方に口出しされたり、野鳥の識別を問われたりなどで、面倒に感じ徐々にストレスが溜まっていったのでは?
一見、野鳥に強い関心がある様子なのですが、実は関心の的は野鳥というより、撮影そのものではなかったか。とすれば識別など二の次です。私はそんな心情を理解せずまた疑問もなく、識別は、特徴は、撮影マナーはと追い込むのに手を貸していたのではないか。会を去っていかれる表の理由は、個々人によりいろいろと異なっていたので底流にある共通の要因が見えにくくなっていました。一部を除き円満退会はほとんどなく、立場上、しばしば騒動の渦中や周辺で右往左往しており、(理不尽な誹謗に会うなど)なおさら目がくもっていたようでした。
識別やマナーは野鳥の会として譲れない一線ではあっても、識別は、マナーは、と言い立てることで、気分的に少しずつ追い込まれるタイプの会員がいる、という認識は大切です。会員それぞれが自らの志向、すなわちファインダー派と双眼鏡派が自認のうえ互いを理解できれば、きっと共存は可能なはず。今後自認を欠くファインダー派入会が増える可能性もあり、本会として、正しく見極め、適切な対策と対応が必要となるのではないでしょうか。
(2022-12-06掲載、「野鳥だより・筑豊」2022年9月号より転載)
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