鳥見界隈で使われる隠語や専門語を集めて、余分かつ不十分に説明や余談を試みています。
用語集に似せた擬態により、一方的な主張や的外れの感想をあたかも公認された原理のように見せかけていますので、野外と同様に慎重かつ注意深い観察をおすすめします。
掲載の基準は、(1)当サイトの用語説明に使える、(2)よその用語録で掲載がない、(3)筑豊ローカルである、(4)他と解釈が異なる、(5)“いまさら聞けない”のいずれかに該当していること。
- あしゅ【亜種】生物分類の階層(上位から界・門・綱・目・科・属・種)において、種の下位となる層のこと。たとえば、種ハクセキレイには、タイワンハクセキレイ、ハクセキレイ、ホオジロハクセキレイの3亜種が日本で確認されている。このときハクセキレイのように種名と亜種名に同じものがあることに留意されたい。野外で識別可能な亜種を記録し、報告などでは、種と同列に扱うのではなく、区別して亜種であることを特に示す必要がある。ホオジロハクセキレイ(亜種)とハクセキレイを同一のリストに記載するような場合は、ハクセキレイを種とするか亜種とするかでは議論が分かれる。筑豊地方では、野外で識別可能として、ホオジロハクセキレイ、リュウキュウサンショウクイ、ハチジョウツグミ、シベリアアオジ、アカウソの5亜種が確認されている。
- かぶり【被り】野鳥の写真で、目的の被写体(野鳥)の前に望まれない障害物が重なって見えている様子。一般にたいへん嫌われる状況である。「枝かぶり」「草かぶり」などのほか、特定の色調に染まる色かぶりもある。その他の障害物に続けて“○○かぶり”のように接尾語として使う。
- かんさつ【観察】野鳥など対象の種や数を知るため、様子や識別点などを注意深く見たり、声を聞いたりすること。対象に干渉したり操作しないことが必要。観察の「観」の字から、視覚による手段のみと考える意見もあるが、野鳥の場合は、聴覚も含めて、対象から情報を取得するすべての手段を指す。観察の際は、なるべく対象に影響を与えることのないよう、じゅうぶんな間隔をとるようにしたい。
- きじゅんちいきメッシュ【基準地域メッシュ】地域を一意的に特定するため、日本全国を約1km四方の碁盤目に区分し、8ケタの数字でコード化したもの。別名「3次メッシュ」といい、表記されたコードを「メッシュ・コード」と言う。野鳥の観察記録[参照]に観察地点の表記は欠かせない。ところが地点を表す地名は、個人や状況により様々であり、地名から地点を特定することが困難な場合も多い。たとえば遠賀川、英彦山などのように漠然とした広がりや、○○市○○1丁目のように地点は特定可能でも、同じ仕組みが町村にはないので統一的に扱えないなど。行政区分にくらべ境域の変更がなく、計量的比較、時系列比較が容易。メッシュにより分割するシステムは他にもあるが、この方法は、官製基準(JIS規格:JIS X 0410:2002)なので情報が公開されており誰でも利用できることから、他の分野などと共通化がはかれ利点は多い。欠点は、地理的な手がかりが乏しい山中では現在地点のメッシュ・コードを取得するのが若干難しい場合があることや、地点を含むメッシュ・コードを割り出すためにメッシュマップという地形図が必要なこと。問題点もある。経緯度の基準となる測地系は、現在世界測地系がスタンダードとなっているが、まだ日本測地系という旧規格が行われており、一般性や互換性が失われる。このため、日本測地系の有効期限が切れるのを見越して、世界測地系基準のメッシュ・コードを使用することも可能で、当サイトでは、@を冠して世界測地系による3次メッシュ・コードを試行している。[実例]@5030-3576(支部事務所を含むメッシュコード/世界測地系)。[参考]2万5千分の1地形図(国土地理院発行)をタテ・ヨコ10等分してコードを割り振っている。都道府県別に分冊した「都道府県別メッシュマップ」が販売されている。当サイトのローカル・ルールとして、#5030-3566のように、コード先頭に識別子#を付して表す。
- くまたかさま【くまたか様】当サイト、メイン・タイトルに現れる飛翔姿の守り神。一日一度拝めば、ご利益があるとか...
- けいちく【京築】行橋市、苅田町、みやこ町、豊前市、築上町、吉富町、上毛町
△ページトップへ
- こんぐん【混群】異なる種同士が群を作ること。繁殖期以外の時期、シジュウカラ、ヤマガラ、コゲラ、エナガ、メジロなどが群れになり、移動しながら採餌するのを見ることがある。
- しきべつ【識別】対象の生存を妨げたり脅かすことのないよう注意しながら、その場で種類を見分けること(野鳥は言うに及ばず、一般に標本を根こそぎ採集したり持ち帰ったりしないこと)。一定の集合の中から互いの相違点に着目して見分けること。野鳥の場合は、右の方法を原則に種(または亜種)まで見分けること。識別では、普通、その根拠を要求されることはない。ただし、1.よく似ていて識別が困難な種、2.本来の生息場所ではない環境での観察や迷鳥の観察、3.時期的にきわめて珍しい場合など、特異な観察では、識別の根拠となった説明または写真などの提示があれば、さらに信頼性が増す。ちなみによく似たことばに“同定”がある。同定(どうてい)は、採取した個体とあらかじめ種が判明している標本を比べ、種名を求めるそうである。野鳥ではこの方法はほとんど不可能に近い(バンディングや死体収得を除く)ため、離れた場所から観察により対象を特定する識別の方法が発達したと聞く。よって、現場での観察で即決したり、あるいは特長のメモ、記憶などの観察情報を元にこれまでの経験や図鑑の記述(いずれも情報)を参考にして特定したとき、“同定”したというのは(もちろん自由だが)、表現として少々大げさであり、方法的にも異なるので無理があるように思う。興味深いのは、識別は「情報」の相違点から、また同定は「標本」の相似点を根拠とする、互いに反対側からのアプローチとなること。識別と同定では、種(または亜種)の特定の正確さ、再現性。客観性において、同定の方がはるかに優れる。
- しゅうにん【終認】そのシーズンが終わり渡り鳥が渡去していなくなるとき、その渡り鳥の最後の観察のこと。その日を終認日という。渡り鳥の最初の観察となる初認は、よく目立つので分かりやすいが、終認は難しいことが多い。
- しょうめんがお【正面顔】真正面から見た野鳥の顔。「顔面」とも言う。正面からまじまじと見る機会は案外少なく、野鳥の写真でも構図としてまるで重視されていない。意外に面構えのりっぱなものや結構“ひょうきん”な顔を持っているものも少なくない。フィールドマークを捉えるため、ややもすれば背面、下面、側面に注意しがちだが、正面顔は造形の妙を感じさせ、捨て置くには惜しい観察分野である。[実例]、[参考]とりのまち福津では、多くの正面顔コレクションが見られておすすめである。
- しょにん【初認】冬鳥や夏鳥などの渡り鳥をそのシーズンではじめて観察したこと。その日を初認日という。
- スポットセンサス法【spot census】鳥類生息調査の手法のひとつ。野外の鳥類においては、一定地域の鳥類の実相を調べることはたいへん困難なため、近似的に調べる方法の一つとして考案された。方法は、調査フィールドに一定長の調査ルートを設け、等間隔(250m)に調査地点(スポット)を設定し、各地点で一定時間(10分)留まって(これがミソ)、その間の観察を記録し、移動中は記録しない。よく似た調査法に、定められた区間を定速で移動しつつ一定の範囲内の記録をとる〔ラインセンサス法〕があるが、両者の比較では、スポットセンサス法の方が記録の件数が多いことが確かめられている。
- たかばしら【タカ柱】渡る途中のタカ類の群れが、上昇気流を捉えてらせん状に円を描きながら空高く昇っていくこと。またはその様子。単に気流を捉えるためだけでなく、集合し群れを成すために利用している可能性もある。タカ柱の上空で渡りに都合のよい風が吹いていると、気流に乗ってそのまま一直線に飛び去っていく様子が見られる。これを〔流れる〕と言う。なお、このような行動は、ミヤマガラスにも見られ、こちらの方は、気流に乗るのではなく、移動の際に群れを形成するために行われていると推測される。本会では“カラスばしら”と呼ぶ。
- ただ【只】“普通の”を表す接頭語。たとえばモズやツバメなどは単独の和名であるが、チゴモズやイワツバメなどのように、要素として他の和名の一部にもなっている。これらを特に区別して強調するときに使う。たとえばイワツバメの群れに混じっているツバメを指して「ただツバメ」、ハチジョウツグミ(亜種)かと思ったらツグミだったなどというとき、ツグミを指して「ただツグミ」などと言う。初心者が標準和名と間違わないよう使用には注意しよう。
△ページトップへ
- ちくほう【筑豊】日本野鳥の会筑豊支部が主な活動エリアとする地域。福岡県中央部に位置し、石炭産業の興隆に伴い近世になって生まれた地域名である。筑前の国、豊前の国の中間にあることから、両国の頭文字をとって名づけられた。飯塚市、嘉麻市、直方市、宮若市、田川市、桂川町、鞍手町、小竹町、糸田町、大任町、川崎町、香春町、添田町、福智町、赤村の15自治体を含む。
- でる【出る】鳥が出現すること。[実例]「なんか出ましたかぁ?」
- とりあわせ【鳥合わせ】探鳥会や観察会など複数の観察者が同行し、同じ地域を同時期に観察した際、終了時に観察した野鳥の種などを確認しうこと。各人の観察を総合して観察リストを作成する。
- バード・ウォッチング【bird watching】バード・ワッチングとも言う。野鳥観察または探鳥の意味。意味は同じだが語感や来歴、背景が異なる。ベトナム戦争後の米国を発祥とするバックパッキングを端緒にして、1970年ごろアウトドア・スポーツをライフスタイルとする考え方がマスコミを通じて日本にも広まった。同時にバックパッキングをベースに野外で自然保護に配意しつつ楽しむ趣味活動も普及したが、フライ・フィッシング、フリー・クライミングなどといった野外活動の一つとして、バード・ウォッチングも右の文脈の中で市民権を得ている。「野鳥観察」より軽快で手軽な印象、「探鳥」より垢抜けた語感などを得て受け入れられた。とはいえ、野鳥を見て癒される程度の観察であり、識別にまで踏み込まないきらいがある。ちなみに「探鳥」は、日本で独自に打ち立てられた趣味カテゴリであり、外国からの移入ではないとされる。よって、バード・ウォッチングと探鳥はよく似ているが厳密には別ものである
- はいっている【入っている】望遠鏡(スコープ)の視野に目的の野鳥などを捉えていること。
- はいれつ【配列】「日本鳥類目録 改訂第6版」(日本鳥学会2000)(以下、目録[参照])に記載された和名の記載順序。観察種など野鳥のリストを作成するときは、この記載順序に準じて作成する。当サイトでの記述の順序は、はじめに目録の順序で種名を記述し、亜種名があるときは、属する種の位置に亜種であることを示す記号などを付して表す。科、属の不明種観察があれば種のリストのあとに目録の順序で科名にsp.を付して続ける(属名sp.表記も可能とされるが、野鳥の場合はあまり行われていないようである)。よって、種名sp.(例:ハシブトガラスsp.)といった表記はふさわしくない。なお、同じ科で複数の不明観察があるときは、科名sp.1、科名sp.2などのように1からの番号を付して区別することができる。
△ページトップへ
- ひこさんのとり【ひこさんの鳥】日本野鳥の会筑豊支部制作の本。1995年8月西日本新聞社刊、157ページ19cm、ISBN:978-4-8167-0398-0(4-8167-0398-5)(この項、書きかけ)
- ひろいこみ【拾い込み】野鳥が他の野鳥のさえずりやその他の声などをまねて鳴くこと。またはその声。
- フィールド・ガイド【field guide】図鑑の一種。野外の現場で、採取せずに識別[参照]できるよう、特に考えて編集された図鑑類のこと。観察家の聖典ともいえる「フィールドガイド 日本の野鳥」(通称「高野図鑑」)は、その典型である(同書ピーター・スコット氏の「発刊に寄せて」はもっと注目されるべき提言である)。この種の図鑑が際立って優れているのは、幅広い見識により、類似種との相違点を挙げ、生活の場での様子(飛翔姿や声の特徴、生息環境)や特徴となる注意点(フィールド・マーク)などを記載し、野外識別において間違いにくく分かりやすいよう、観察現場に即して実際的に編集されていることである。ちなみに旧来の図鑑は、採集後の標本を詳細に分析するときに役立つように編集されているので、野外での使用には必ずしも適していない。優れたフィールド・ガイドの編集方法は、野鳥のように標本採集ができない分野では、必須の条件である。この考え方による図鑑は植物や昆虫などほかの分野にも浸透しつつあると言われるが、わが国では野鳥を除けばまだまだ未開拓の分野であり、それほど広く知られているとは言えない。フィールド・ガイドを標榜していても、参照図はイラストではなく写真を使用したものがほとんどなのは残念である。きわめて端的に言えば、フィールド・ガイドは現場で「識別」を助ける図鑑であり、それ以前(以外)の図鑑は自宅(や研究室)で「同定」[参照]するための図鑑である。ちなみに、フィールド・ガイドの歴史は意外に古い。初めて発行されたのは日本野鳥の会創立と同じ年1934年、アメリカでのことである。
- プロミナー【PROMINAR】興和の商品名。略称“プロミ”などと言い、かつてはスポッティング・スコープ(望遠鏡)の通称名として使われていたが、現在では死語に近い。
- もくろく【目録】日本鳥学会によるわが国で観察された鳥類を掲載した書籍の通称。最新版は2000年発行の「日本鳥類目録 改訂第6版」(日本鳥学会刊)。日本鳥学界公認の日本産鳥類18目74科230属542種、外来種26種を収録した。 野鳥観察家の間で“目録”は、和名、学名、配列順等の参照に利用されることが多い。販売(4200円)されているが、リストを参照するだけなら、宮城県支部のありがたいサービスがある。目・科・種・亜種の学名、和名まで記載されており、じゅうぶんに必要を満たすことができる。データはCSV形式?なので、インストール済ならエクセルで、エクセルが無いなら、クローンソフト(無料)を利用してもよいが、少し調べる程度なら、ウィンドウズの場合(スタート>すべてのプログラム>アクセサリ>)メモ帳でじゅうぶんである。Macならシンプルテキストで(未確認)。
- ものさしどり【物差し鳥】鳥の大きさ(体長)を判断するときの基準になる種。スズメ、ムクドリ、キジバト、ハシブトガラスなどを大きさの基準にして、たとえばスズメより大きい。キジバトより小さいなどと言う。筑豊地方ではムクドリは新顔であるが分布域も広くなってきたので、かろうじて物差し鳥になりうるだろう。
- やちょう【野鳥】本来の生息地で自然のままに生活する鳥のこと。日本野鳥の会の創始者、中西悟堂(なかにしごどう)が「探鳥会」の語とともに普及につとめた。当時、鳥と言えば、捕まえてカゴで飼うのが普通の楽しみ方だったが、「野の鳥は野に」のスローガンで、あるがままの鳥を本来の自然の中で観て楽しもうという考え方を背景に野鳥(やちょう)ということばを社会に広めたものである。(迷鳥などは厳密にはこの定義から外れるように見えるが、気象ほか自然による作用の結果であり、過渡的な事態として広義には含まれる)
△ページトップへ
- やってる【遣ってる】野鳥観察用語辞典(BIRDER.jp)によれば「繁殖している。」という意味だそうである。
- ライファー【lifer】生まれて初めて観察した(または撮影した)鳥の事。転じて、今までに見た野鳥の種数を言う場合もある。視認が要件のようでもある。比較的新しめの用語。[実例]このヤイロチョウはライファーだ。
- りゅうちょう【留鳥】ある地域で、通年観察できる種。種に着目するのであって、固体の移動は無関係である。たとえば、ヒヨドリは渡りをする(入れ替わる)が、筑豊では年中観察できるので、留鳥である。
- りょうしき【良識】「良識ある野鳥観察家は、いつでも見分けられるものではないことをよく知っていて、十分に見ることができなかった場合には、はっきりと鳥の名は言いません。」(「フィールドガイド 日本の野鳥」[参考]より)
- ▼めすのさえずり【メスの囀り】一部の野鳥はメスもさえずるそうである。サンコウチョウ、オオルリ、マミジロ、コルリ、コマドリ、イソヒヨドリ、イカル、カヤクグリ、ミソサザイなど。(この項、書きかけ)
- ▼かんさつきろく【観察記録】狭義には、識別や行動を知るため野鳥の様子や声などをそっと窺い、結果を記録したもの。識別は比較的短時間でできるので、記録がとりやすい。識別の記録とは、観察者と対象である野鳥との出会いの記録とも言える。一般に、二者が出会うためには原理的に4つの条件が必須となる。すなわち、1.野鳥、2.観察者、3.時、4.場所。3項目までは比較的簡単に一意的な指定が可能。1。観察者は観察した個人の名前。2.和名。3.時は、年月日。4.場所。この場所の表記のみいくつもの指定法が混在するので、標準化のため、できれば、「都道府県別メッシュマップ」による3次メッシュ[参照]を勧めたい。(この項、書きかけ)
△ページトップへ
(編責:有働)