第三回リーダー育成研修会

講演「録音でつき合う野鳥の世界」を拝聴して

有働孝士

本稿は、田中良介氏による第三回リーダー育成研修会の講演「録音でつき合う野鳥の世界」について、感想を述べたものです。
さて、私たちが観察というとき、五感のうち二つの感覚器官をフルに活用して外界から情報を取り込んでいます。視覚と聴覚です。視覚と聴覚を比較したとき、どちらの方がより多くの情報を摂取しているのでしょうか。ある研究によれば、五感のうち脳が受け取る視覚情報量は83%、聴覚11%だそうで、圧倒的に視覚が優っています。視覚に関わる言葉は、たとえば色や形など聴覚に比べ非常に豊富です。この差はお手元のフィールドガイドを開けば一目瞭然です。視覚的情報は豊富に記述されているのに比べ、鳴き声の説明はどうでしょうか。ほとんで無いに等しいくらいです。実際、野外で聞いた声を言葉で仲間に伝えることがいかに困難か、経験された方も多いことでしょう。残念なことに、これが五感における聴覚のニッチです。
しかしながら、現代人はこのような貧しい聴覚と言葉環境を補う録音という素晴らしいテクノロジーを手にしました。エジソンに端を発するこの便利で高度なテクノロジーですが、やはり相応の取り扱い技術や何より録音機の購入などが壁となって、私たち観察家の気軽な利用を阻んでいるのでしょうか？否、それは“錯覚”です。どういう錯覚かは、別稿「誰でもできる野鳥録音のすすめ」（会報2016年8月号掲載予定、要アカウント）で述べていますので、参照してください。
カメラの登場で視覚的識別力が大幅に向上したという野鳥カメラマンは多いと思います。いまや観察家は、双眼鏡ではなく望遠カメラのファインダーやモニタから観察しているという本気ともつかぬ冗談が聞かれます。こういう現状に、小型高性能のデジタル録音機が登場し、観察の双璧である聴覚識別力が一気に向上するはずでしたが、さて、どうでしょうか。
右のような観測と期待から、私も田中良介氏の講演を心待ちにしていました。識別の補助ツールとしての録音機が持つ可能性、耳を通して野鳥に接するということの意義や、録音という補助手段がどのように私たちの識別技術を向上させうるか、等についてきっと大きなヒントを頂戴できると期待したからです。長いまくらでした。陳謝。

研修会に参加された中国からの若いお客さまへ、中国語によるご挨拶から始まった意表を突く講演開始。さらに講義はなんと予想外の天文学からスタートしました。黄道面に対する地軸の傾きから四季が生じました。そして日本列島にズームイン。東西南北に広がる日本列島の地理的位置がさらに自然を多様化し、野鳥の季節的変化を豊かにしています。こうした自然背景は文化に大きな影響を与え続けました。日本列島に暮らす日本人は古来から独自の自然観を育み、季節とともに遷移する野鳥へ関心が向かいました。種の概念は無くとも、四季と重ねあわせて、野鳥は自然風景には不可欠なシンボルとなっており、万葉集や古事記には古代人の心象風景が色濃く描写されています。このような観点を持つ講師の詩的感覚は、後に“音の風景”というジャンルに結晶していきます。
講師の野外録音は、大きく分けて二つの方法で実現されています。一つは「ライブ録音」。マイク（録音機）を構え野鳥の声をリアルタイムに録音します。もう一つは「放置録音」。ここぞという場所に録音機をセットし、タイマーで録音開始を制御する方法です。後者の方法は、野鳥についての深い見識と勘に富む講師の独壇場でしょう。後に述べる「鳥好き良ちゃんの声の野鳥だより」には多くの名録音が残されており、“一聴”をおすすめします。
制御が難しいゆえ録音の大敵であるノイズ。極力ノイズを排し思うように録音するため、講師はいつも一人で行動されます。野外ならではのノイズの筆頭が、遥か上空から爆音を撒き散らす鉄の鳥・旅客機というのは意外ながらも納得。林を吹き抜ける風の音や沢の水音、都会地の地鳴りのような低周波音などの連続音は、背景雑音の一種、グラウンド・ノイズとして、野外録音には付き物の障害となります。一部のノイズは、ソフトウェア処理で見事に除去できることを示されましたが、驚くべきことです。
キビタキを例に、一部の野鳥には他の野鳥の声を取り込む（拾い込み）能力があると、講師は主張します。キビタキが、コジュケイやサンコウチョウの声を取り込んだとされる録音も聞かせていただきました。これらは生得のものか学習の賜物か。興味は尽きません。
野鳥の鳴き声クイズは、かなり歯応えのある演し物でした。外国語に堪能で、中国や韓国に気軽に足を運ばれる講師ならではの国内外の野鳥の声が渾然となった音源。博識な聴衆からわずかな正解はあったものの、多くは悲惨な結果となりました。環境から声だけを抜き出されると、識別が難しくなるという方もおられ、鳥の声と同時に環境の音が取り込まれる“音の風景”的手法には臨場感以外に識別上の有意性もあるようです。
はじめに出された美しいコウライウグイスのさえずりの問題は、一見縁遠い外国の野鳥の話かと思いきや、実は毎年4月下旬には福岡県を通過しているはずとの耳寄りな情報もあり、国境を持たない野鳥にとっては、中国、韓国は陸続き、福岡とは海続きでした。いつも身ひとつ、移動が無料でパスポート要らずの野鳥にとっては、何ほどのこともないのでしょう。どこで出会うか予想ができず、出会えばきっと腰を抜かすに違いありません。美しいさえずりは聴きたいし、せめて姿は見たいものだと、意欲をかき立てられるお話でした。
最後に、講師ご自身が代表を務めるボランティア・グループ「バードコール」のご紹介です。一年間の録音をCDに集大成し、毎年視覚障がい者へ“音の風景”を無償提供する活動はじめ、いくつかの無償福祉活動を続けておられます。先にご紹介した「鳥好き良ちゃんの声の野鳥だより」
http://yacho.org/a/168から、私たち晴眼者もこの活動の余録にあずかることができます。2005年発表のCD以降、ウェブサイト［くまたか］にはすべて収録しており、誰でも聴くことができます。ぜひ訪れてください。
こうして、豊富かつ多様なテーマを駆使した約1時間30分の講演は瞬く間に終わりました。
田中良介様、たいへん貴重で興味深いお話をどうもありがとうございました。
拙稿では話題の取りこぼしが多く、また筆者の貧しい文章力では田中講師のお話のサビをここに再現する力などありません。また、残念ながら内容の取りこぼしもあり、全容を知りたい方や再確認されたい方のために講演の録画を用意しています。研修会動画を訪れ、「録音でつき合う野鳥の世界」の録画を再生してください（6月25日以降有効）。
拙稿の間違い・過不足の責はひとえに筆者のものです。もし瑕疵があったときは、講師ほか関係者の方々に深くお詫び申し上げます。

（2016-06-15）

第三回リーダー育成研修会

講演「ワシタカ・ハヤブサ類識別講座」を拝聴して

有働孝士

本稿は、波多野邦彦氏による第三回リーダー育成研修会の講演「ワシタカ・ハヤブサ類識別講座／独断と偏見の識別講座夏季特別版」について、内容をご紹介し、感想を述べたものです。
個人的な事情で恐縮ですが、私はワシタカ・ハヤブサ類の識別が非常な弱点で、今回の講義のテーマをうかがったとき、これはモノにしなければと密かに決意して参加しました。講師は、挨拶の後、さっそく聴衆に質問を発します。「現在国内で記録のある、ワシタカ、ハヤブサ類は何種くらいだと思いますか？」撃沈です。ちなみにワシタカ類26種、ハヤブサ類8種だそうです。
これでメゲていては、せっかくの機会が無駄になります。気を取り直して集中（とはいえ、以降ずっと撃沈級の連打に襲われる）します。ワシタカ類は識別が難しいカテゴリーに属すると講師が言われました。おお、これは追い風です。その理由は、飛翔姿による識別が普通となるため。観察が短時間となるうえ、静止しないため翔び方も次々に変化し、捉えどころがありません。しかし、この理由こそが、逆に学習のポイントとなります。いずれにしても観察経験の数がものを言う世界です。（がんばろう）
本稿では、講習の要点を文に起こしています。講演のように特徴をイラストや写真で示すのも極めて効果的ですが、文にすれば、注目点や特徴を一意に示し強調することができ、むしろその点では優位かもしれません。以下の文言は、講師の受け売りながら、稚拙な文をかいくぐって講師が提示する本質に注目していただければ、きっと識別の際の大きな力となるでしょう。というわけで、復習のつもりで以下張り切って作文です。
講師は、識別のポイントとして、まず形とバランス、次に翔び方、そして大きさ、という三つの大切な要素を提示されました。以降、会場における講習では、パワーポイントによる写真を使った擬似演習となりましたが、これら三要素を軸に説明が進みます。

トビは、大型というので最初に取り上げられました。さすがによく知られたタカで、留鳥でありものさし鳥としても最適です。この私でさえ何とか識別できます。ただ、意外と誤認の多い種でもあります。知っているからと油断の無いようにしたいものです。
クマタカは、さらに大型で筑豊支部のシンボルでもあります。特徴はほとんど羽ばたかず帆翔すること。翼が長方形に近く、次列風切羽の部分が後方に膨らんでいるため翼全体が大きく見えます。１〜２月頃には雌雄で急降下、上昇を繰り返す波状飛行、両翼を広げてのV字飛行などのディスプレイフライトが見られます。留鳥です。縄張りを律儀に巡回し、予想時刻通り通過することさえあるとか（これを知っていれば自らの実力を“誇示”することができるそうですwww）。
ハイタカ属。各種の和名ではなく、「属」と一括りになっているのがミソ。まず属としての共通の特徴を把握し、次に各種別の特徴を識別します（この手法は一般的に他の属でも有効で、昨年の講義でも言及されました）。ハイタカ属は、小型から中型のタカ類で、下面が白く翼は短く幅広で尾が長い。木の枝の中にとまるが多い（アカハラダカ除く）ので、山の端ではなく山面に注意し、こちら向きなら下面の白がよく目立ちます。余談ながら、達人はハイタカ属をその学名Accipiterから“アクシピター”と言うそうですが、多少隠語めいた匂いもあり、入門者は使い方を慎重に。
しばしば写真では翼指（よくし、初列風切の羽）の数が決め手になりますが、野外ではまず視認できず、また必要な際に役立つのはハイタカ（６本）、ツミ（５本）、アカハラダカ（４本）の３種です。他のタカ類ではあまり意味がありません。
単独でいる場合、大きさの判断には充分な経験が必要です。幼鳥の大きさについて誤解する人がいますが、幼いから小さいことはなく、ほぼ成鳥と同大です。
ハイタカはキジバト大の小型のタカ類で冬鳥です。背や後頸部に白斑のある個体が多く、翼は短く幅広くて、尾が角尾で長く、体型はスマートです。飛び方はパタパタパタスー、パタパタパタスー。
ツミは、周年生息し、ほぼキジバトと同大。（他の３種と比較して）体が太くコロッとした印象があること。ハイタカに比べて尾の割合が短めです。
アカハラダカはキジバトよりも小さくツミと並んで小さなタカで、春秋の旅鳥です。成鳥の特徴は下面が白く、翼の先が黒、胸・腹にオレンジ色味があることです。飛んでいる時は（翼指が少ないため）翼の先端が細く尖って見えます。
オオタカの個体数は多くなく、冬鳥です。♂はハシボソガラス、♀はハシブトガラスと同大。ハイタカ大型と見間違えないよう要注意。翼の前面から頸の突出、紡錘形のからだ、翼後縁の膨らみ、腰の巻き上げ、尾の形で識別します。

集団で日本上空を渡るタカ類の説明です。このカテゴリーの代表格は、ハチクマ、サシバ、アカハラダカの３種です。９月〜１１月頃にかけてが、秋の渡りの時期です。これらタカ類の識別では、渡るルートおよび季節感が大切です。春よりも秋の方が集中して渡っていきます。他のタカ類も少数ながら渡っていますので見逃さないようにします。
渡りの観察では、講師はいつもワシタカ、ハヤブサ類１０種を目標にしているそうです。気合が入っています。
ハチクマの渡りのコース。秋は、日本列島を南下したハチクマは北部九州を通過、長崎県五島列島周辺に集まり、その後一気に東シナ海上空を通過し中国大陸を目指します。９月いっぱい渡りを観察することができ、ほぼ中旬、中旬過ぎ頃がピークになります。冬には見られません。春は４月〜５月、朝鮮半島を通過して九州に入ってきます。個体数は秋に比べると1/5程度。すべて成鳥だそうです。ハチクマは首が長いため、翼の前面から突き出した部分が長く見えます。尾は長く、広げると円尾になります。
サシバは、秋も春もほぼ同じルートを渡っていくようです。サシバの主要コースは沖縄南西諸島を通りますので、この地域ではたくさんのサシバを見ることができ、越冬する個体も多いようです。主要コースがどちらかというと南に偏り北部九州上空を通っていません。大きさはハシボソガラスくらい。翼が細長く、胴体もスマート。尾が長く全体的にたいへんスマートです。明るい空を背景にしたとき翼が半透明に見え、上面が赤褐色なところも他のタカに無い特徴です。また、「ピッ、クイーッ」と大きなよく通る声で鳴きます。里山で繁殖します。まれにほぼ全身真っ黒の黒色型がいます。
アカハラダカは、朝鮮半島から九州の西側をとおり、沖縄、南西諸島を通過し台湾、フィリピンに渡ります。秋は集団で渡っていきますが、春は秋ほどまとまりません。
ノスリは、北部九州では冬鳥。色彩に変異が多い種類です。成鳥は虹彩の色が暗色、幼鳥は明るい傾向があります。結構目立つ場所にとまっていることが多く、ホバリング（停空飛翔）も頻繁に行います。カラスとほぼ同大。オオタカともほぼ同大です。翼角の暗色斑、腹の暗色帯が目印です。翼が幅広く、尾が短く、ずんぐりとしています。
以下ハヤブサ類のご紹介です。
ハヤブサ♀は５０ｃｍでハシボソガラスとほぼ同大。♂はもう少し小さいです。常に翼が尖っているとは限らず、帆翔しているときは翼と尾を目いっぱい広げている場合があります。非常に力強い飛び方をします。留鳥。
チゴハヤブサは、北日本で繁殖し、九州では春秋の渡りの時期に通過します。タカの渡りの時も普通にみられます。♂３１ｃｍ　♀３５ｃｍ　キジバトとほぼ同大。翼が細長く尾が短いため、遠くから見ると鎌型の翼がアマツバメを連想させます。成鳥は赤褐色の下腹部が目立ちます、幼鳥では薄いベージュ色です。
コチョウゲンボウは力強い飛び方で、チョウゲンボウのようなヒラヒラ感がなく、小さなハヤブサといった感じです。直線的に非常に速く飛び回り、空中で飛んでいる小鳥を上手に捕まえます。結構低いところにもとまります。冬鳥。
チョウゲンボウは、タカの渡りではごく少数。九州では冬鳥です。翼・尾が細長くとてもスマートなハヤブサ類です。広大な田んぼでよく見ることができます。電柱などてっぺんにとまる習性があり、またヒラヒラとした羽ばたきで飛びます。停空飛翔（ホバリング）を一番頻繁に行い獲物を狙います。よく似たコチョウゲンボウやチゴハヤブサなどはこの停空飛翔をしませんので、この飛び方が見分けのポイントになります。
以上で、身近に見られるワシタカ・ハヤブサ類の説明を終わります。

「ワシタカ、ハヤブサ類識別クイズ？？？」の時間です。
はじめに、識別図鑑には、本文前後に、使い方、用語など多くの総合的な案内が載っています。これは一度でもぜひ読破しておくべきです。野鳥の身体の部位には細かく名称があり、特徴の説明をするときは必ず使いますので、代表的な部分でも覚えておくことをすすめます。たとえば、顔の一部を指して「ほっぺた」とは言わず「耳羽」（じう）と言い、足の一部は「跗蹠」（ふしょ）と言います。
私たち人間は脚を曲げると「く」の字になりますが、鳥は逆に＞の形に見えて不思議です。腿が羽毛に隠されているため異なって見えますが、脚の基本構造は人と変わりません。＞形の上半分はスネ、中央の折れた部分はかかと、下半分は足の甲（跗蹠）なのです。よって野鳥は、人で言えば爪先立って歩いていることになり、面白くて奇妙です。
鳥では、長さを表す３種類の用語、全長（ぜんちょう、クチバシ〜尾の先）、翼長（よくちょう、閉じた翼の肩〜風切羽先端）、翼開長（よくかいちょう、広げた両翼の全長）が重要です。翼の構造は、開いた状態、閉じた状態で雨覆と風切羽がどう変化するかも確認しておきます。
クイズということで、オジロワシ、カタシロワシ、カラフトワシ。それに、ケアシノスリ、オオノスリが紹介されました。
講師は、カタシロワシを、決してカタジジロワシなどと言ってはならぬ、ホウジロは間違い、正しくはホオジロと書くべし、と厳しく諌められました。また、鳥合わせ後観察リストを作成しますが、５０音順配列もやはりNGです。きちんと日本鳥類目録改訂第７版に準拠すべしとのことです。オオノスリの説明で出た「フラッシュ」とは、翼上面の目立つ白斑を指しているようですが、後になって、詳しい定義をお聞きしておくべきだったと思いました。
カウントといえば、ランダムに広がった多数の野鳥をたちどころに数えてしまう“超能力”だと、世間では野鳥の会のトレードマークのように思われています。講師は、世間の期待に応えるかのように、アカハラダカの渡りの群れをスクリーンに映し出し、さあ何羽？と迫ります。
羽数カウントの基本は、“十把一絡げ”的手法を使います。群れの単位（10羽など）当たりの面積を把握し、この単位面積がいくつあるか素早く見積もり、数えることで全体数を推測します。大きな群れでは、10羽の群れからさらに100羽の面積を把握すれば、素早く千羽単位をカウントできます。慣れればかなり正確にカウント可能で、講師によるスクリーン上の群れをカウントする実演でも、実数149羽に対し、講師の見積もりは150羽でした。まさに超能力を見ているようでしたが、規模によっては数えなくても直感的に分かるようです。
似た者同士の例で、尖った翼がポイントのハヤブサ類。ワシタカ、ハヤブサ類では翔び方に特徴があり識別の要点です。アカハラダカ幼鳥とツミ、ツミとハイタカは識別にも注意が必要です。写真画像では翔び方までは分かりませんので、現地でよく観察します。遠目にすると、アマツバメ類はチゴハヤブサ類に、また、トケン類はチョウゲンボウ、ハイタカに似るので注意します。
チュウヒの大型♀は、ほぼノスリやハシブトガラス大。チュウヒ大陸型雄成鳥など様々なタイプがあります。ハイイロチュウヒやマダラチュウヒはこれよりも小型（ウスハイイロチュウヒ幼鳥、ヒメハイイロチュウヒ幼鳥の例写真）。マダラチュウヒ雄成鳥、雌成鳥、幼鳥など。基本的に春秋の渡りの時期に観察されます。

最後になりますが、ワシタカ類の観察にはこれまで述べてきたような探鳥技術が必要です。また、写真を撮る方は、画像だけに頼るのではなく、飛び方や行動の特徴、声などといった現地での生の情報をメモに残すのがよいと思います。高名な観察家や団体など権威筋に惑わされること無く、自分の頭でよく考えることも大切です。そして、探鳥会に参加するときは、毎回自分で何か具体的な目標を立ててから出かけましょう。
最後に波多野講師のお言葉で翼を閉じることにします。

ワシタカ、ハヤブサ類　やればやるほど奥が深く難しいカテゴリーです。でも遣り甲斐はあるし、絶対に面白いこと請け合いです。ぜひ鳥見を大好きになっていただいて、いろいろな野鳥観察を続けてくださいね。

波多野講師の「独断と偏見の識別講座」は、ワシタカ類ほか多くの種について本誌やウェブサイト［くまたか］http://yacho.org/a/213でも連載中です。［くまたか］では第一回から過去の記事が読めますので、ご利用ください。
本稿の主要な内容は、講師のプレゼン用パワーポイント・ファイルから拝借しており、拙稿の締め切り間近、勝手ながらお忙しい時間に割り込み、添削していただきました。
しかしながら、拙稿の間違い・過不足の責はひとえに筆者のものです。もし瑕疵があったときは、講師ほか関係者の方々に深くお詫び申し上げます。

（2016-06-15）